高専在学中４ ページ35
「あ、ビッチ」
「……その呼び方やめてください」
「じゃあ痴女」
「はぁ…………」
自販機前にいた先客に思わずゲッと顔を顰める。私が踵を返すより先に気づかれてしまった。相変わらず憎ったらしいボンボンだ。
私と五条先輩は仲が悪かった。なぜなら向こうが私を猛烈に嫌ってきたから。入学当初は関わる機会もなかったので特に何もなかったのに、夏油先輩と関わり始めてから嫌悪感をあからさまにしてきて、もともと五条先輩が好きじゃなかった私はすぐ嫌いになった。今では犬猿の仲に近い。思うに以前は私が夏油先輩に頻繁に話しかけていたから親友をとられたと嫉妬していたのだろう。本人は無自覚なようだが、人をもののように扱って癇癪を起こすなんて子どもだなと内心馬鹿にしていた。しかし今、私はまったくと言っていいほど夏油先輩との関わりはない。五条先輩に邪険にされる謂れはないはずだ。
「七海とはヤった？」
「言う必要ないですよねそれ」
「うげぇ、言い方七海にそっくり。オマエってそんとき一緒にいる男の口調移るタイプ？ あ、それとも真似してんの？」
「なら五条先輩は夏油先輩ともっと引っ付いたほうがいいのでは？」
「ア？ どういう意味だコラ」
「用がないなら退いてくれませんか。買えません」
自分の飲み物を買い終わっているくせに自販機前からいっこうに退く気配がない。すると何を思ったのか五条先輩は新たにお札を入れて「どれ？ 自分の押せ」と言ってきた。どういう風の吹き回しだろう。変に抗っても面倒くさいので大人しくお目当てのボタンを押した。
五条先輩はプルタブを開け、自販機にもたれ掛かってジーッとこちらを見ている。気まずい。本当になんなんだ。
「オマエさあ、傑のこと飽きたん？ 前までずっと引き摺ってただろ」
「夏油先輩はただの先輩です」
「へぇーじゃあ七海のこと好きなワケ？」
「……さっきから何なんですか？」
七海のことが好きかなんて、私自身が一番知りたい。答えの出ていない問いに対して答えることはできない。
「んやー別に、オマエが今誰を好きだろうが知ったこちゃねえんだけど……あー……オマエ最近傑と話した？」
先輩は言いづらそうに首裏を掻いている。
「話してないです」
「傑と話してやってくんね？ そのなんつーの……カウンセリング？ みたいな」
「はあ……？」
「だからァ〜……！！」
今度はガシガシと頭を掻いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 91人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
墓場(プロフ) - Ａさん» レスするの忘れてました😭💦 (2023年2月4日 1時) (
レス) id: 95aead40e8 (このIDを非表示/違反報告)
墓場(プロフ) - コメントありがとうございます😭🙇🏻♀️夢主の優柔不断さが物語の肝になるのでちゃんと伝わっていて安心しました……コメントとても嬉しいです、！！ストーリーが地獄ですが最後まで見届けていただけるようがんばります。 (2023年2月4日 1時) (レス) id: 95aead40e8 (このIDを非表示/違反報告)
Ａ - 七海の穏やかさが心に沁みました。最低な男に惚れてしまう私の優柔不断さも相まって、めちゃくちゃ感情移入してしまいました… (2023年2月4日 0時) (レス) @page1 id: f9229a002a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：相沢 | 作成日時：2023年1月21日 21時
