愛されたいのは

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えっ？と思ったけど、レジのカウンター越しに少したいすけさんの方に体を近付けると、

たいすけさんも私の方に顔を近付け、耳打ちするように小声で言った。



「勘違いかな？俺たちの事見てたでしょ」


私は思わずバッとレジカウンターから1歩下がり、ぶんぶんと首を横に振った。


「ほんとに？」


コクコクと高速で頷いたけど、かなりキョドってるよね、私。

本当は見てましたって言ってるようなもんだわ。


「まぁいいけど」


そう言いながらお釣りを財布にしまったたいすけさんの顔は「お見通しだよ」と言ってるようだった。



「じゃあまたね、Aちゃん」


あれ？

私 名前なんて教えてないし、名札もないのに。


「俺も好きなんだよ、人間観察」


って言い残してお友達と一緒にお店を出ていった。






「おい」

「ひえっ！」


ぐるぐるといろんな考えを巡らしてる時に、急に北山さんに呼ばれ変な声が出た。


「なんだよ、今のは」

「き、聞こえてました？」

「お前また客のあれこれを観察してたろ！」

「ごめんなさいっ！」


怪しい店員に見られるから、客を観察するのはやめろと言われていたのに…


「あー、Aちゃん、またやったなー？」

「俊くんまでーーー」


宮田さんと私は働きだしてから、すっかり仲良くなっちゃって、名前で呼び合う仲。


「そんなに観察したいなら、俺を観察しろよ」


なんて親指で自分を指して、めっちゃイケボで言ってくる俊くん。

王子様キャラでもないのに、自称王子様キャラだから困る。


「何言ってんの？」

「はははっ、冷たいなー、我が家の姫はっ！」


なんて言いながら厨房に引っ込んで行った。

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