愛されたいのは

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「藤ヶ谷 太輔ねぇ…お前に声かけるなんて物好きだな。
あ、LINEのID書いてある。やらしいな」

「ちょっと返して下さいよ！」


北山さんはすぐこうやって私をからかうんだから！

いいおもちゃにされてる気がしてならない。

いつもだったらもっとしつこく絡んだ挙句に、厨房に逃げたりするのに、今日はあっさり返してくれた。

そしてじっと私を見た後に

「お前さ…連絡すんの？」

なんて少し弱気な声で聞いてくるから、私も調子狂う。

「そんなの…わかんないです」

ふーんって言いながら接客に戻っていった。





さっきはきちんと名刺を見る間もなく北山さんに奪われちゃったけど…

藤ヶ谷さんって言うんだ。

ずっと勝手にたいすけさんって呼んでたから、私の中ではたいすけさんが定着してたんだけど…

藤ヶ谷 太輔さんか…




「えー！？Aちゃん、名刺もらったの？
我が家の姫はモテモテだなーー！」

って俊くんまで絡んできた。

「もう、うるさいな！」

「あっははー、変な奴かもしれないから、気をつけるんだぞ？」

と頭をポンポンしてきた。

俊くん、こーいうアニメのお兄ちゃんっぽい行動好きだよね。

「はーい、お兄ちゃん」

とわざとかわいく妹キャラを演じてみた。

うわっ、それ萌えるわー、なんて言いながら片付けた食器を厨房へと運んだ。







その日の夜は予約も少なくて、なんとか終電に間に合う時間に帰れた。

実家暮らしの私。

お風呂に入り自分の部屋で昼間にもらった名刺を左手に持ち、右手にスマホ。

名刺を見つめること30分。

本当に連絡とかってしてもいいのかな。

名刺までもらって無視するのも逆に失礼かな…

でももう12時近いし、夜遅いし…

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