愛されたいのは

45 ページ46

*


「さ、朝ご飯頂こうかな」

って布団をめくってダイニングテーブルに座った。

私も慌てて後をおいかけ、太輔さんのお茶碗にご飯をよそった。


「はい、どーぞ」

「ありがとう。わー、和食だー」


ナスのお味噌汁や卵焼きというシンプルな朝ご飯だけど、太輔さんは和食が好きだから

絶対喜んでくれると思ってたんだ。








それから太輔さんは会社に行く準備をして、私も一度家に帰るために着替えた。

二人で家を出ようと私が靴を履きかけた時に、ちょっと待ってって言う太輔さん。


「ちょっとそこに立って、行ってらっしゃいって言って」

「えっ？」

「早く」

「い、いってらっしゃい」

「もっと心こめて」

「…いってらっしゃい！」


って笑顔で言ってみた。


「めちゃくちゃいいね」


っていたずらっ子みたいに笑う。

じゃあ行こうって二人で部屋を出た。









開店準備中、どこかうわの空だった私は北山さんにも俊くんにも注意され…反省。

営業中はなんとか失敗せずにいれたけど、ちょっと気を引き締めていかないと。

一人でお店に置いてある雑誌を見ながら休憩していると、2階から俊くんが下りてきた。

もう北山さんちを完全にセカンドハウス化してる。


「どうしたの？」

「うん、そろそろ来る頃かなーと思って」

「え？誰が？」


そう言った直後にお店のドアが開き、店の中に入ってきたのは…


「裕太…」

「久しぶり…」

「玉、ここに座んなよ。俺コーヒー入れるから」


裕太を私の向かい側に座らせると、カウンターでコーヒーを入れる準備を始めた。


「宮田からAがここにいるって聞いて」

「ごめんね、わざわざ来てくれて。ありがとう」


何から話せばいいのかな。

裕太を見ると、裕太も同じような顔してる。

ちょっとの間続く沈黙の中、俊くんが入れるコーヒーのいい匂いがした。

そしてどうぞって裕太の前に置いた。


「俺、上にいるからさ！また帰る時声かけてよ」

46→←44

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す