9話 ページ11
まずは当たり障りのない話題。
とは言え、達也たちと真由美たちの間に、共通の話題は無いに等しい。
会話は自然と今食べている料理のことになる。
自動調理だからレトルトになるのは仕方がないのだが、最近の加工食品は普通の料理に比べてもそれほど遜色が無い。
とは言うもののそれは「平均的な」料理に比べてのことであり、物足りなさは否めない。
「そのお弁当は、渡辺先輩がご自分でお作りになられたのですか?」
深雪の意図は、単に会話を円滑にするためのセリフで、他意は無かったはずだ。
しかし鈴峰には、摩利がパッと見料理の出来る外見ではないことを言っているように思えた。
「そうだ。・・・意外か?」
深雪に問われ、頷いた後、少し意地の悪い口調で摩利は答えにくい質問を返した。
それは摩利も鈴峰と同じように思ったことを表していた。
まあ、本気で嫌味を言った訳ではなく、出来過ぎに見える下級生を軽くからかっただけだったが、
「いえ、少しも」
本人を狼狽させる前に、その隣から間髪を容れず否定の言葉を打ち返された。
「・・・そうか」
達也の目は、摩利の手元_________指を見ている。
機械任せか、自分で料理しているのか、どのくらい料理ができるのか、できないのか・・・全て見透かされているような気分になって、摩利は気恥ずかしさを覚えた。
「わたしたちも、明日からお弁当に致しましょうか」
深雪のさり気ない一言で、達也も自然に視線を外す。
「深雪の弁当はとても魅力的だが、食べる場所がね・・・」
「あっ、そうですね・・・まずそれを探さなければ・・・」
二人の会話は______交わされる言葉そのものよりも、会話している時の空気は、この年頃の異性の肉親同士にしては、少し親しすぎるものに見える。
これには鈴峰も少し怯んでいた。
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光井 ほのか
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作者名:龍牙 | 作成日時:2017年6月24日 23時