その感情に名前をつけるなら ページ8
広い廊下に足音が一つ響き渡る。まるで何かに急かされているようにリズムを刻む音に、周りにいた黒服達が振り返り様、足音の主の並々ならぬ威圧感に全身の震えが止まらなくなっていた。向かう先にはある人の自室。扉前には、まるで番犬のように中原中也が立っていた。足音に気付いた中原が、目前の人物へと目を向ける。が、中原が先に目に飛び込んで来たのはその人の顔ではなく、拳だった。
中「ッ!!!!!」
ズザザッ、とよろける体を立ち直す為右足を後ろへとズラす。それを許すまいと殴った男は素早く中原の胸倉を掴んだ。
中「……なんだそのヌルいパンチは」
殴られた左頰がジンジンと痛む。しかし中原は、その痛み以上の感情を用いているのはこの男だとその顔を見て即座に理解してしまった。
中「手前のそんなツラ、初めて見たぜ。なァ最年少幹部さんよォ」
太「……」
中「兄さんなら首領のお陰で一命は取り留めた。が、絶対安静だ此処は通らせないぜ」
太「…中也」
中「ア?」
太「君が側に居ながら、この失態はなんだ」
鳶色の目が鋭く中原を射抜く。他の者なら失神してしまう程の空気を醸し出すが、中原は微動だにしない。
中「なら、青鯖が側に居たらこんな失態は無かったのか?中堅以下の体術、しかも異能力者相手にしか通じないポンコツ異能力で兄さんを守れたっつーのかよ!」
胸倉を掴んでいた太宰の手首を掴み力を込め振り払う。
中「最近の兄さんはクソ程任される仕事に疲弊していた。だがなァ、一番兄さんを苦しめてたのは手前なんだよ太宰治」
太「……何なの、まるで自分はあの人の事を何でも知っているみたいな言い方」
中「分かるに決まってンだろ、俺はあの人の側近「それがムカつくんだよ!!」…」
太「私だってあの人の側近になりたかった!幹部になんてなりたくもなかった!」
初めて見る相棒の表情に目を見開く中原。それに対しある言葉が思い浮かぶ。恐らく太宰は気付いていない感情を。
中「…ンだよそれ、只の嫉妬じゃねェか」
太「し、っと…?」
中「手前は俺に嫉妬してたって事だよ莫ァ迦」
そんな簡単な事も分かンなかったのかよ。と付け足す中原の言葉が頭の中で響き渡る。
太「…中也、兄さんを撃った敵は?」
中「殺したかったが地下に繋いでる」
踵を返す太宰。その顔は、何かに吹っ切れた清々しい表情。その後、情報を吐き出した敵の無残な屍が拷問の惨さを静かに語っていた。
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時