死の家の鼠 ページ21
地下を拠点とする盗賊団「死の家の鼠」頭目。 フョードル ・Dはそれが極当たり前かのようにAと歩幅を揃える。
『…何も聞かないんだな』
D「そちらこそ、問いただしたい事が多々あるんじゃないですか?」
『あり過ぎて忘れた』
D「ふふ……真逆、帰って来るとは思いませんでした」
帰って来る。その単語に違和感を覚え眉をひそめる。何故ならこの地を踏むつもりは毛頭無かったからだ。それでも戻ってきた理由。それは
『きちんと別れを告げてなかったから』
その言葉にピタリ、とフョードルの動きが止まる。紫の瞳と金の瞳がかち合うと、動いたのはフョードルの口ではなく左手。Aの顔へと移動すると掴んだのは右目につけている眼帯。ゆっくりと眼帯を取っていけば、露わになるのは隠されていたAの紅の瞳。
D「お帰りなさい、A」
魔人は静かに微笑んだ。
Aは何も答えずに、フョードルの目を見つめた後眼帯を奪い取り再び歩き始めた。普段一人でいる時以外は必ず眼帯をするAだが、この魔人の前ではそれが御法度になる。理由は謎のままだ。
D「それにしても、此方ではなく時計塔の従騎士へ行くと思っていました。あそこなら貴方の好きなお菓子が沢山あるでしょう?」
『真逆。国の焼ける匂いは紅茶にあうなんて言う奴だぞ……お菓子は、一寸迷ったけど』
見慣れた景色に少し懐かしさを覚えながら、ぽつんと見えた扉に手を掛ける。其処は複数ある死の家の鼠の拠点。室内は白を基調とした殺風景な作りになっている。
D「貴方の部屋はそのままにしていますよ」
お茶を淹れてきます、そう言いながら奥に消えるフョードルの後ろ姿に『スイーツもよろ』と声をかけて見送った後、昔住んでいた部屋へと向かう。扉を開けた先には、同じく殺風景。ベッドと机が1つずつ。机の上には数冊の本。この空間だけが、組織を抜け出したあの日のままになっていた。
組織、といえばポートマフィアの誰にも言わず此方に来てしまった。今まで沢山の組織で同じ状況を作ってきたが、ポートマフィアに関しては胸が苦しいと感じるA。しかし、今後の事を考えるとこの時間は必要不可欠なんだと己に言い聞かせる。
『…戻る前に言い訳でも考えておこう』
自分を慕う小さな部下と、長身の元部下が思い浮かんだ。
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短い話なので、本編前の箸休め程度で読んでくだされば幸いです。ドストエフスキーが大好きです。
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時