久しぶり ページ30
≪漣 A 視点≫
隣町の八百屋にはやはり大根がおいてあった
大きな大根を一本買った
前は冨岡さんに連れてきて貰ったが
今日は1人
時刻は昼過ぎ
まだ時間には余裕がある
隣町を見たくて1人でぷらぷらと歩く
「すみません、」
町は混んでいてすれ違う際にぶつかる
やっぱり村と違って隣町は栄えてるな〜
少し前に実弥に連れてきてもらった記憶がちらつく
…実弥、元気かな?
自分から逃げたくせに
もう実弥に会うことはできない
実弥のことばかり考えていたからか
少し奥にある甘味処に目がいく
そこにいる男女の2人組を見て息ができなくなった
全身から力がなくなる
どうして、ここに
見たくない気持ちがあるのに
その人から目が離せない
ほんの数秒だったと思う
ほんの数秒、私は甘味処にいる男女をじっと見つめていた
視線に気付いたのか、その男の人が私を見る
目を見開き、たくさんの人が行き交う中
私だけをまっすぐ見つめる
その男の人の口が動く
声は聞こえない
でも何度も見たことがあるその動き
『A』
きっと彼は私の名前を呼んだ
「さね、あっ」
「ねぇーちゃん、そんなとこで突っ立ってんな!邪魔だ!」
急に体を押され衝撃に耐えられず地面に流れ込む
早く帰らないと
実弥が来る前に早く離れないと
「おい、大丈夫か」
起き上がろうとする私に手を差し伸べたのは
「冨岡さん…」
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作者名:りん | 作成日時:2019年11月19日 22時