耳元で歌わせて（赤）9 (ページ17)

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そんなアワアワしとるヒナに向かっておっちゃんが

｢村上｣

｢前例が無いって言うてたら何も始まらんのちゃいますか｣

｢渋谷らが前例になってそのうち通例になって業績のばせばええだけですやん｣

｢ちゃんと俺が見てます｣

｢それに何よりあいつら二人は間違えませんて｣

｢そう大見得切ったんはお前やからな｣

そう言うてニヤリと笑ろて

｢ほな解散｣

言うて立ち上がったおっちゃんに続いて

部長らも立ち上がって

立ちすくんどる俺ら二人の横を通り過ぎる時に

｢二人の仕事っぷり見とったら手放すなんてできひんわ｣

｢まぁ頑張って｣

って順番に俺の肩をポンと叩いて出て行かれた

頭下げて全員が出て行かれるん見送ったら

ドアが閉まると同時にドアを支えとったヒナがへなへなとその場に崩れ落ちた

Aちゃんと急いで駆け寄ったら

涙でうるうるの目で俺を見上げて

｢ほんま良かったぁ｣

言うてふんにゃり笑った

｢村上くんありがとお｣

ヒナの前に跪いて涙ぐんだAちゃんが頭を下げる

俺はヒナの腕を掴んで立ち上がらせたらその勢いでハグして

｢ヒナほんまにありがとお｣

そう言うてから離れる

ヒナは

｢俺は俺の仕事したまでや｣

って八重歯見せて爽やかにわろてくれた

三人で部屋を出て行きかけた時ヒナが思い出したよおに

｢あっせや｣

｢さっき話しとったおっさんやけど｣

｢人事部長兼任しとる相談役やからな｣

｢普段ほとんど表には出て来おへんけど味方にしたらこれ以上無い強みやし｣

って八重歯見せて今度は悪い顔で笑ろてる

｢あと夫婦なった話詳しい聞かせてもらうからな｣

そう言うてさっさと行ってもた

俺とAちゃんは顔見合わせて

｢この呼び出しより緊張する...｣

って呟いたAちゃんに激しく同意した