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車を停めた章ちゃんがエンジンも切って
私に声をかけることなく車を降りる
私はどうしたらいいか分からず
ぎゅっと目を閉じて
両手でシートベルトを握りしめた
後部座席のドアが開いて
章ちゃんがトートバッグを取り出す気配がする
私はすがるようにシートベルトを握る手にさらに力を入れた
後部座席のドアが閉まって直ぐに
助手席のドアが開けられた
「A」
章ちゃんがこれ以上無いくらい優しい声で私を呼ぶ
でもその優しい声ですら
今の私には死刑宣告のようで
目を瞑ったまま身動ぎとれずにいた
そんな私の鼻を掠めるように
章ちゃんがお気に入りの香水と汗が混じった匂いがして
章ちゃんの気配に包まれると同時に
カチャリと音をたててシートベルトが外された
その音に思わず目を開けてしまうと
思った以上に近いところに章ちゃんの顔があって
ちょっと泣きそうな目で私を見つめていた
口許を歪めて
無理矢理笑顔らしきものを作った章ちゃんが
固くシートベルトを握りしめていた私の手を
そっと優しく解いて
「降りて」
と言った
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作者名：UTA
| 作成日時：2020年9月10日 19時
