十年日記 (ページ14)

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そこにはきちんと前を向いて

僕を見捨てず生きている彼女がいて

彼女は僕にも何かを書くように言った

十年前

僕は何を考えて生きていただろう

全く思い出せない

十年間はそれほどまでにも長い時間

そう

十年前は

僕はたつと出会ってすらいなかった

たつの存在しない世界でも

僕は笑っていたし

それなりに幸せだと思っていた

はず

けど

たつの笑顔を

たつが僕の名前を愛しそうに呼ぶ声を

たつの腕の中のあたたかさを

知ってしまった今

たつの存在しない世界で

十年どころか

今日を過去にすることすら

うまくできずに過ごしているのに

僕はたつのいないこの世界で

十年後も生きているんだろうか

そう思わないでも無かったけど

僕と同じようにたつを愛していた彼女が

僕より歳下の彼女が

憎くてたまらないはずの僕を

たつのために護ろうとしてくれているから

たつが「小学生みたいやなぁ」って笑った字で

『たつの見たかった景色を見に行く』

『たつみたいにたくさんご飯を食べた』

と書いた