誕生日プレゼント2 (青) (ページ13)

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まだ長くは座れないしあまり柔らかすぎる腰が沈み込むような椅子には座れないって言うヤスくんに
すごく言って良いものか悩んだけれど
ヤスくんの家でカットする訪問カットもできるよって伝えた

ヤスくんは少しの躊躇もなく
｢ええの？｣｢そぉしてもらえると助かる｣
って言ってくれて電話を切ると直ぐに住所がメールで送られてきた

この何年かの付き合いの中でヤスくんが決して甘える事が得意ではない事を知っていた私は
二つ返事で頼ってきたヤスくんのケガの酷さを改めて感じて
そして自分の家を躊躇うことなく私に教えてくれた信頼を何があっても裏切らないようにしようと誓った

ヤスくんの家に行って髪をカットした日
ヤスくんの状態を目の当たりにして思わず腰をそっとさすった日からまたヤスくんは私に全てを委ねてくれるようになった
仕事の合間にヤスくんの髪型を考える時間は私の中でとても幸せな理美容師冥利につきる時間だった

あの日ヤスくんが映るかもと思ってつけていた朝のワイドショーで髪を刈り上げた姿を見て言葉を失った
傷が見えていることももちろんだけど
私の作品を他の人の手で壊されたことも
そのどちらも決して口にすることは出来ないことも
私を食事もとれないほどに打ちのめすショックな出来事だった

ヤスくんに正式に専属を依頼されたわけではない私は持って行き場のない感情を
ただ目が腫れるほどに泣いて抑えるしか出来なかった

いくらかの時間が過ぎて
私はあくまでヤスくんが気が向いた時に足を向ける店のただの理美容師だと
それ以上でもそれ以下でもないと自分を納得させた頃
彼からの予約が入った