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初めて会った時
キャップを後ろ向きに被って黒マスクをした彼は常連のお客様の後ろから躊躇いがちに顔を出して軽く会釈をした
目しか出ていないのに整った顔だなぁと思った事を覚えている

常連のお客様は「ずっとこの店を紹介したいと思っていたんだ」「ちょうどと言うのは変だけど今日は予定が入ってしまったので代わりに彼を」そう言い残して帰って行かれた

彼の帽子と大きなリュックを受け取ると鏡の前に促す
彼は帽子でぺしゃんこになった髪をガシガシと掻き崩しながら椅子に座ると「お願いしますぅ」と鏡越しに会釈しながら黒いマスクをはずした

その顔は想像していたイケメンをはるかに超えていた
持って生まれた美しさだけでなく溢れるチカラを感じるイケメン
オーラがあるとはこういう事なのだと思った

「今日はどのようになさいますか?」鏡越しだけど彼に視線を合わせるとそらされることもなくきちんと合わせてきて
「今はあんま切られへんねんなぁ」とおっしゃって
切りたくないではなく切られないとおっしゃった言葉に少し引っかかったけれど
初めてのお客様に踏み込むことは出来ずに髪に軽くブラシを通す

「お時間はどれ位なら大丈夫ですか?」そうお尋ねすると
「明日は夕方からやから全然ゆっくり出来んねんけど」「こちらさんの都合もあるでしょ?」と
視線を合わせたまま優しいトーンで私を思いやってくださった

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作者名:UTA | 作成日時:2019年9月11日 14時

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