最年少幹部部下となりました ４冊目

後悔の記録１６０ ページ16

「……狙撃手の逃げ道を、潰しています」


ちいちゃな声で、ありのままの現状を報告した。


『ふうん、そう。敵なら金庫を持っている織田作の方を狙うとは気づかなかったのかな』
「きづ、……に、逃げられた時のほうがデメリットが大きいかなと、」
『言い訳は聞いてない』



太宰幹部は、よくこういう怒り方をする。
まず、遠まわしな嫌味で恐怖をキリキリと積み上げ、決定的な一言で相手をつき落とす。


『君はいつも見極めが甘い』
「…………」
『これじゃ織田作にとっても足手まといでしかないよ』


だって最初から織田作ひとりで解決できる事件なんです、と言ってやりたかったが、我慢した。


「……、……」
『志賀君のサポートがないと何もできないようだね』


次に、相手が本気で苛つくような話題をあえて出し、煽る。例えば私なら志賀、芥川なら私(未来では中島敦)である。
(Aは知らないが、志賀の場合はAの話題である)


『黙ってないで何か言ったら？』
「……すみませんでした」

ちなみにこの段階で謝っても説教は終わらないが、謝らないとまた最初の嫌味に戻る。


『もっと状況を見ろ』

そして最後に、相手の欠点や致命的なミスを端的に指摘する。それは大抵、本当に核心をついているために、なにも反論できない。

私がなにか返事をする前に、そこで通話は切れた。


「ッは〜〜〜……こっわ……」


緊張が解けて、その場にずるずると力なくしゃがみ込む。

今回の件、一歩引いた立場で取り組む気だったが、そうもいかなくなってしまった。
今までの仕事とは違い、太宰幹部が前線の指揮を執っているからだ。

つまり、舐めた行動をとれば、太宰さんにすぐバレる。

「……いやきっつ。本気で仕事できないンだって……、」


だって、私がこの事件に本気で介入して、うっかり織田作を救済してみろ。
太宰さんは探偵社に入らず、きっと将来は対天人五衰戦でゲームオーバーだ。


いくら救済したくても。すべてを知っていても。
ここだけは変えてはならない。



「まじでクソゲー……」

ひとりぼっちのRPG負けイベントである。


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改めて、読者様方、見に来てくれてありがとうございます。
最近になって、ハート(いいね？)機能に気づきました。あれめちゃくちゃモチベ上がりますね！
hit数もお星さまも、話に付けられたハートも、ありがたく頂戴します。
とっても嬉しい。がんばります。

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