最年少幹部部下となりました

苦労の記録１５ ページ15

流石にあの鬼上司も仕事と訓練つきでこれを覚えるのは無理だと分かったのか──それでも私ほどの神童じゃなきゃ無理だ──この3日間は休みにした。

それはもう、寝る間も惜しんで覚えた。この3日間お風呂中も料理中もずっと暗記してたのだからもう完璧だ。態々(わざわざ)一個一個異能で出せるか
確認までした。

「ふふふふ。」


にやにやしながら訓練所で太宰さんを待つ。

全て記憶するのがどれだけ大変だったか！呪文を唱えるごとく暗記事項を呟く私を見て避けていく人々にどれだけ心を痛めたか！

苦労の日々に感傷に浸っていると、足音が聞こえてきた。

「(この足音、太宰さんだ。)」


私は姿勢を改めた。

「……。」
「おっ、おはようございます。」

無言で太宰さんはやってきたが、なんだか眠そうな面持ちだ。気まずい空気を断ち切って太宰さんは凛々しく言った。

「ベレッタ 92FS Inox。」


確かアニメの太宰さんが廃墟で使って銃だ。私が首を傾げていると太宰さんは溜息をついた。

「出して。」
「あっ、はい。」


相変わらずの不遜な態度にイラつきながら
異能でベレッタ 92FS Inoxを出す。どーよ！と自慢げに彼を見るも無視だった。


「なに？ほら、早く撃ってよ。」


なんか言うことないわけ？！まさか私が当然のごとく遂行すると思ってたのか？普通の人ならその無茶振りきかないんだからな！と憤慨する。

まあいい、今度はちゃんと撃ち方を調べたのだ。流石に家で発砲はできなかったから、ちゃんと使える銃なのか不安に思いながら、引き金を引く。


「！」

ドン、と重い発砲音が腹に響いた。

撃てた〜〜！流石私！とドヤ顔にならないよう心の中で自画自賛、歓喜の嵐。太宰さんはそれが普通、とでも言いたげに私の発砲を無視して再び命令した。

「USSRトカレフ。」

「次、トンプソン M1928」

「M4A1。」


その後も私に感激する間も与えず、太宰さんは淡々と
色んな銃の名前を言ってくる。今の所全部撃てているため、余裕だなと思ってると太宰さんが少し違う銃火器の名をあげた。

「M9A1のバズーカ。」

バズーカと聞いて目を見開く。ここで撃ったらすごいことになるけど、と彼を訝しげに見る。

「あの、此処で撃っても……？」

と言うと太宰さんはまた溜息。

「知ってると思うけど、私は異能を無効化するのだから私に向かって撃てばいい。……少しは頭を使ってくれ給え。」


世界一教職が似合わない男だと思った。

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