第三十九譚 ページ39
_
ピピピ、ピピピピ……。
ぼんやりした意識の中、体温計の音が鳴る。
＿＿＿＿翌朝、日曜日。
「あークソ…」
氷室は寮の自室で、布団にくるまっていた。
体温計のいつもより高い数値を見て、道理でダルいわけだと理解した。
氷室も高校生だ。自分の管理は自分で出来る。それから弱った姿を見られたくないので、自室に自分を隔離し篭っている。
寮内は静かである。ほとんどの生徒が朝のランニングや、自主練などで雄英の施設に行っているからだ。氷室だけ取り残された状態。
「…なーんも出来ねえな。笑える」
風邪で喉を痛めている影響からか、氷室の声は掠れきってしまっていた。乾いた笑いが部屋の中に響く。
とりあえず何か食べなければ。そう思って、氷室は怠くて重い体を起こした。床に足をつけて立ち上がり、ひたひたと部屋の中を歩く。
ドアの前まで来て、はぁ、と息を吐く。この距離でも下手に動き回ると寒気がして不愉快になる。
ドアノブを握って廊下に出ると、ほぼ同時に隣の部屋の扉も開いた。
「…おお、勝己」
「あ？」
「今から朝練でもすんの」
「クソザコ免疫野郎は黙ってろ」
出会って早々、暴言を吐かれた氷室。だが氷室は笑みを絶やさない。…見たところ、爆豪は汗をかいている。既にランニングを終えて来たのだろう。
着替えを持っているため、これから風呂に入って朝ごはんという流れと見た。なるほどなるほど…ならば。
「な、勝己。一生の頼みがある」
「聞かねぇ。テメーでやれ」
「なんで。まだ何も言ってないじゃん」
「テメェの朝メシも作れって言いてぇ顔だろが！オメーの言うことなんぞ分かってんだよ！」
大当たり。図星を突かれ、「バレた？」と氷室は首を傾げた。
基本、学生の朝の食事もクックヒーローのランチラッシュ先生が作ってくれて、それを寮で食べることも出来るのだが…氷室は、爆豪が自炊する様を見ていたので、作るならついでに作って欲しいなあと思ったのだ。
「ついでだよついで。勝己と同じものでいいからさあ」
へらへらとする氷室だが、声も掠れているし、珍しく汗も流れている。明らかに体調が悪そうだ。
「病人は寝てろやカス！！」
そう怒鳴りつけ、氷室を部屋に押し込んで乱暴に扉を閉めた。まあ爆豪の事だし、やっぱり作ってくれないよな。
そう思い、氷室は諦めてベッドにぼふんと身を投げる。もうひと眠りが出来そうだ。眠気に身を任せると、氷室の白いまつ毛が降りた。
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 948人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» そうです〜！！氷室編で出すかどうか今は迷っております〜ややこしくならないよう心がけます💪 (2021年11月27日 0時) (
レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 瑠李さん» ｱ!!ありがとうございます！！(*´╰╯`)楽しみに待ってくれているのだなと思えるだけでとても力になりますありがとうございます！頑張ります！！ (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - へ！？逆巻さんて、あの、時間巻き戻しの逆巻さんですね(^^♪。活躍場面は、あるのでしょうか(^^)？ (2021年11月26日 22時) (レス) id: a424e1a16c (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - めっちゃ好きです˙˚ʚ₍ ᐢ. ̫ .ᐢ ₎ɞ˚読んでます。更新いつも楽しみに待っています。頑張ってください。応援してます。 (2021年11月26日 18時) (レス) id: 9824e2f221 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - あのさん» ありがとうございます〜！！男主に触れて下さり嬉しいです！コメントとても力になります…！頑張ります！！！ (2021年11月26日 1時) (レス) @page47 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
