Necromance81 ページ31
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目が覚めると、何時もの自宅の天井。ガンガンと二日酔いの頭痛が寝起きの藤崎を襲う中、ずしりと愛猫のオサムが腹に飛び乗って来る。
「ゔっ…、乱暴な起こし方だね…!でも好き」
オサムはにゃあにゃあと普段よりも多く鳴き声を上げ、藤崎の顔をてしてしと叩く。
「んん…もう少し寝かせて…」
瞼を開けて薄らとオサムを見ると、その青い瞳はジッと真っ直ぐ…窓の外を見て居た。瞬きする事無く。真っ白な長い尻尾が太くなっており、その様子から猫が『恐怖を抱いて居る』と判った。
「…如何したの。虫でも居た?」
むくりと起き上がり、優しく愛猫を撫でる。オサムが落ち着いた事を確認すると、先程青い瞳が捉えて居た窓の外に視線を移す。
「っな、」
息を飲んだ。既に街中が『灰色の気体』だらけだったのだ。嫌な汗が首筋を伝う。予測はして居たが、こんなにも早く…。
迷って居る暇は無い。覚悟ならばとうの昔に済ませた筈だ。それでも…。何故だか、手の震えが止まらなかった。
「…あは、何だよこれ…情けないな」
ぐ、と掌を握り締め、直ぐ様身支度を整える。黒のアタッシュケースを持ち、家を出ようと玄関で靴を履く。玄関までオサムが見送りに来たので、家を出る最後に、もう一度オサムを撫でた。その表情は切なげで。
「……ごめんね。行って来ます」
家を出た。扉を閉め、灰色の気体を吸い込まない様に口を押さえながら車に乗り込む。黒いアタッシュケースを後部座席に放り込む。後部座席には、同じ様なアタッシュケースが沢山積んであった。
走り出す車。シートベルトすらして居る暇が無い。
猛速度で車を走らせて向かった先は、横浜一の大病院。そこには既に灰色の気体…サクリファイスを吸い込んだ影響で、激痛を訴える大量の患者が搬送されて居る。
病院の前に急ブレーキを掛けて止まり、アタッシュケースを
ひとつだけ持って車を降りる。病院内に入ると案の定、未知の激痛に悶える患者が、待合席にも溢れ返って居た。
何処かと連絡をする白衣の医師を止める。この病院の院長だ。
「あの!!」
がしりと白衣を掴んでその男を止める。
「この薬使って下さい!サクリファイスの対抗薬です!お願いだ、信じてくれ!」
と、医師にアタッシュケースを引き渡す。然し見ず知らずの人間が作った薬等使うはずも無く、医師はそれを拒んだ。
「時間が無いんだよ!!サクリファイスの激痛は自然治癒では治らない!!」
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Necromance82→←Necromance80 穢れた追憶:伍
何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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