傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】

Necromance４６ ページ46

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「おい…藤崎手前、」


何で避けなかった。中原はそう云おうとしたが、それよりも先に、藤崎の右手が中原の肩に優しく乗った。


「…お願いだ、中也君」



俯いた藤崎が、掠れた声で云った。短刀を抜こうとした中原。
藤崎は中原の手首を掴んで、それを阻止する。何故止めるのだと疑問に思う中原が、藤崎の顔を見上げた。


桜髪の男の表情は…見た事の無い物だった。苦しそうで切なそうで、演技では出来ない複雑な表情。



「彼を護ってあげてくれ。俺はこの通り弱い。一人で背負って
突っ走るアイザック君を、止める事が…出来ない」



「ンで…俺なんだよ」



「君が…素直でいい子だからかなぁ…」



普段なら気色が悪くて、鳥肌が立つ言葉。然し今は…親や兄の様にも感じられる言葉、雰囲気だった。



「…そう遠くない未来、彼は『贄』となる運命に打ち勝つ。そして、『咆哮』と対峙する。彼がこの街を護る鍵だ。だけど彼一人では無理だ。咆哮の裁きを受け止めるのも、咆哮を玉砕するのも。頼むから、護ってやってくれ。これが俺の要求。叶えてくれないか」



＿＿＿＿理解出来ない。



この男は一体何を云って居る？意味不明な言葉を並べる割には真剣だ。だから尚更判ら無い。



先の話だと云った。決して未来が見える訳では無い。ただ…
そうなると確信する何かが、藤崎の中にある。



最初から。最初から仕組んだんだ。考えてもみてくれ。


…藤崎は、鴎外に「アイザック君が大事」だと云った。それは本当だ。なら何故、藤崎がアイザックを抑止力にしたのか。アイザックの存在をマフィアに教える様な、危険に晒す真似をしたのか。



アイザックの父親は、マフィアの人間だった。ある日、父親が
マフィアから逃亡する為、囮にアイザックを使った。囮となったアイザックは勿論マフィアに捕まる。それが四年前。


そして更にその三年前から、藤崎はそれを『予測』して居た。だから態々云ったのだ。「アイザック君が大事だ」と。



＿＿＿＿何故…マフィアに害を為して囚われたアイザックが…殺されずに、逆にマフィアに歓迎をされたか。



先に「アイザック君が大事だ」と云って置く事で、ポートマフィアはうやむやにアイザックに手が出せなくなる。



藤崎は…ただ自分の命が惜しいが故に、アイザックの名を云った訳では無かった。




その事実を知るのは、次元を超える『君達』だけだよ。







「…護りゃ善いんだろ。離せ。痛ェままだぞ」



「……ありがとう」


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【要注意人物】

藤崎翔：年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。

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