傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】

Necromance４５ ページ45

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「…いいぜ、認めさせてみろ。体術だけでやり合ってやる」


藤崎の体術が、中原にも納得の行く様な物ならば。中原は藤崎の過ちを…赦すとは云わないが、それも『善』であると認識出来る。



善か悪か、藤崎にとっては関係の無い事だが、中原にとっては関係がある。藤崎を『区別』する為に。


体術で中原に勝てる筈が無い。それでも。



「生意気な餓鬼。嫌いじゃないけど」



キン、と甲高い金属音を立て、中原が藤崎を弾き返す。「餓鬼」と云われ腹が立った様だ。


弾かれて、少しばかり体勢を崩した藤崎だったが…地面を摺り体勢を立て直す。


その隙に中原の持つ短刀が振り下ろされる。中原は楽しげである。瞳孔が開き、まるで狂犬の様な表情。


中原の上からの一撃を短刀で受け止めた藤崎は、自身の持つ短刀を傾けて斜面を作る。すると中原の短刀は滑る様に受け流された。


これには中原も驚く。如何やら、力はまるで無くとも…技量は上等。只者では無い。



受け流され、ふらりとした中原。だが地面に手を付き宙返り。着地した地面をくるりと回り、その遠心力のまま藤崎の脇腹に渾身の蹴りが炸裂する。


その姿は猛獣。暴れ回る百獣の王。中原の獅子の様な橙色の髪が靡く。帽子を押さえながら藤崎を蹴り飛ばした。


寸前に腕で防御した藤崎だったが…そのまま吹き飛ばされ、建物の壁に背を撃ち付ける。背にある建物にヒビが入る威力だ。



「う…は、ははは！強いなあ…流石は神。神は好きだけど…
君は一寸…凶暴すぎて俺には…まだ早い、かも…上級者向けだ」



ぱらぱらと崩れかけた壁の塵が風に吹かれ、微かに砂塵を作りあげた。弱る藤崎に近寄る中原。



「何の話をしてやがる。戦わねェと死ぬぞ」



「云われなくても…」



プッ、と血を吐く桜髪の男。腹部を蹴られ、血の味が押し寄せたのだ。地面に吐かれた鮮血。手の甲で口元を拭う。蹴られても離さなかった、左手に持つ短刀を…再度強く握り締める。



だが限界ではある。技量は申し分ない。体力が無いのだ。万年美術部で、あと三年すれば三十路だ。


なんて考えて居れば、中原の短刀が藤崎の短刀に当たり、藤崎が持って居た短刀は遠くに弾かれて仕舞った。


生身ではもう抗えない。止まらない中原の追撃。刃がこちらに向かって来る。まだ避けられる。避けろ、逃げろ、否…、



逃げるな。




左腕を前に構えて、突き刺す中原の一撃を受け止めた。



短刀が藤崎の腕を貫通。血飛沫が両者の頬に付着した。


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【要注意人物】

藤崎翔：年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。

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