Necromance43 ページ43
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「そろそろ…捕まえたかな」
運転席の藤崎がぽつりと云った。中原は横目で桜髪の彼を見る。停車している車。中原がこの場から去らないのは、藤崎を探る為だ。
「何をだよ」
「探偵社の依頼の話。ちゃんと説明して、出没予定地も割り出せば…彼等は強いから、直ぐに捕まえるね」
「…そうかよ。無条件で教えたのか?手前は」
藤崎が無条件で情報を教えるなど珍しい事だ。藤崎が情報の代わりに要求したのは、国木田に一度「翔さん」と呼んで貰う事。それは無条件にも等しい事だ。
「俺は優しいからね」
「…どの口が。異常性癖サディスト」
「チビゴリラ!」
「あァ!?」
今にでも噛み付いて来そうな、中原の鋭い視線。「怖い怖い」と藤崎はへらへら笑う。正直云って虫唾が走る。中原からすれば藤崎は『太宰よりはマシ』な程度である。
「中也君、今日は何か変だね。目を合わせる度に目が泳ぐ。返答に、何時もより少し長い間がある。何かを探っているのかな。俺の何を?知りたいなら聞けば善い」
目を細め、緩やかに笑う藤崎。そんな緩やかな表情で、思考を読まれた。そこまで読まれて居るならば…、逆に聞いて仕舞った方が善い。
「アイザック。手前は彼奴のなんだ。彼奴は何処に居る」
中原がじっと藤崎を見詰める。珍しく藤崎が目を逸らした。一瞬だけ…僅かに切なげな顔をして居た。そうして直ぐに笑顔を繕い、自身の掌に視線を落とす。
「…森医師か。まぁ中也君は幹部だし…アイザック君の師みたいなものだったらしいし…妥当か」
視線の先にある掌を、ぐっと握った。後悔の文字が顔に貼り付けられた様に、唇を噛み締める。この男は、こんなに判り易い表情をする男だっただろうか。
『大切なもの』の事になると、それにしか集中しなくなる。隙が出来る。現に依存とも云える程の織田への執着が、それを証明している。
「そうだ!教えたら、俺の要求も叶えてくれる?」
ぴん、と人差し指を立てて、急に明るい声を出されて驚いた。この男…情緒不安定か。今に始まった事では無いが…中原はそう思った。
「内容による」
「それなら充分だよ。…アイザック君はね」
人の通らない場所に車を止めてあった。二人が乗った高そうな車が、ぽつんと静かに停車して居る。
突如。
凄まじい音を立てて、運転席側の扉が吹き飛んだ。同じく藤崎も遠くに飛ばされ、地面を摺り転がる。重力によって車体が凹む。
「手前…今、何つった」
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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