傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】

Necromance４０ ページ40

_



＿＿＿＿ポートマフィアビル。上層。



獅子の様な橙色の髪に、青の瞳を持つ男…ポートマフィア五大幹部の中原中也は、只今マフィアの首領である森鴎外と、執務室にて会談して居た。


黒の帽子を外して胸に当て、忠誠心を示す中原。



「中也君。藤崎君を覚えて居るかね」


「あの変態異常性癖男ですか。勿論覚えて居ます」


「おや、酷い云われ様だねえ。まあ仕方が無い。中也君は彼にからかわれて居たからね」



鴎外にくすくすと笑われると、中原は少し悔しそうにし、強気の瞳で鴎外を見詰めた。



「それは昔の話です。首領。今はもう奴に振り回される事は無いかと」



「ほう、だと善いがね」



鴎外は半ば疑いの眼差しで、愉快そうに云った。何せ中原は単純な面があるからだ。藤崎は太宰や鴎外に似ている。考え方の趣旨はまるで違うが。


でなければ『均衡者』は務まらない。



マフィアの首領や、信頼や実力で五大幹部に成った者は、既に藤崎の正体を知って居る。


中原も最初、藤崎の正体を知り、大変信じられなかった。あの巫山戯た態度の全てが、偽りだと…否、偽りなのかも判らない。
一体どれが彼なのか判らない。少なくとも異常性癖は彼の本性の一部だ。



然し今日。中原は、本当の彼に近付く。



「藤崎君は視えて仕舞う。それはもう様々な物が。だから七年前、私は彼と取引をしたのだよ」



鴎外と藤崎の取引内容。それは誰も知らない事だ。知ってはいけない事だ。だが、今から中原に頼み事をするには、この情報を中原に伝えなければならない。


場が張り詰めた。緊張感の漂うこの空間に居続けるのは、普通の人間なら耐え難い。



「…幹部クラスでしか閲覧出来ない資料の内容も、彼は知って居る。殺そうにも殺せ無い。藤崎翔と云う男はね。代わりに彼の一番大事な物を聞いた」



七年前、太宰は藤崎に聞いた。「翔の弱みは何」と。そうしてこう答えただろう。「俺の一番大事な物だよ」。




「＿＿＿＿アイザック・バシェヴィス・シンガー。彼自身だと、藤崎君は云って居た」



その名は、藤崎の愛猫を助けてくれた…ゴロツキの彼の名前だった。


アイザックは、元ポートマフィアの人間。太宰の護衛役だった。然し彼は、四年前に任務で『死亡』とされて居た。



「あの死亡記録は、藤崎君が偽装した物だ。そろそろ平気だろう。中也君、君にアイザック君を捜しに行って貰いたいのだよ」



アイザックが生きて居ると知り、中原は暫く言葉を失って居た。


_

Necromance４１→←Necromance３９

【要注意人物】

藤崎翔：年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す