Necromance32 ページ32
_
短く溜め息を吐いた後、乱れた襟を直す。地面に落ちたピアスを拾って、猛毒に蝕まれて倒れる男を見た。
「苦しそうだね」
再度ピアスを左耳に付ける。耳のピアス穴がガバガバに空いて居て驚いた。痛みが鈍感な場所で善かった。穴が広がって居ても、一応ピアスを嵌める事は出来た。
猛毒のピアスが赤く光る。
「あれ、先刻までの威勢は何処へやらぁ?痛い?苦しいよね?そうだ、こうしよう。俺は自分に刺さっても善い様に解毒剤を作ってある。それ専用のな。
白猫の居場所を教えてくれたら君に解毒剤をあげる。悪く無いだろ」
男から見た藤崎の表情は、人の死に際を目前にしても、口角を釣り上げて…目を細めて笑って居る。それだけでは無い。死の先にあるものが待ち遠しくて堪らない、と云う…愛しい物を見る眼差しでもある。
人間とは思えない。霊体性愛の度を超えて居る。
「この先、に、広い…溜まり場が、ある」
そう吐いた。藤崎は男の持ち物をまさぐり、これだ!と小刀を取り上げて、左手に握る。
「善く云えました。偉いね、大人しく消えてくれ」
表情を変えず、小刀を振り上げた。すると銃声。振り上げた腕を撃ち抜かれた。
激痛。然し特に痛みを訴える事は無く、笑顔のまま銃声の方向へ振り返る。
「矢っ張り…犯罪者は一人じゃなかったかあ…」
五人程の男達が背後に居た。一人の男が手に下げているのは、動物を入れるゲージ。布が被せられて居るが、鳴き声で判った。ラグドールのオサムだ。
「…そこか」
然し、生身で五人相手は流石に無理だ。此処が死霊の使い時か。今日の内に少しでも使えば、大痛手になるだろう。
けれど躊躇わなかった。右手袋の中指の先を摘み、手袋を外そうとした…その時。
五人の男達の方から、壮絶な打撃音が響いた。男達の悲鳴。そして辺り一面が『真紅の氷』で覆われる。…誰かの異能だ。
「おい、あんた等」
凛とした声の方を見ると、そこには…淡い金髪に、真紅の瞳をした…青年が居た。この氷の異能力者だ。
金髪の青年を見た途端、藤崎の顔色が一転。へらりとした狂気的な表情が薄れ、衝撃を受けた様に…口を開けたまま固まって居た。
「此処が誰の縄張りか、判ってやってんだろうな」
_
【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
551人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ