傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】

Necromance３ ページ3

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＿＿＿＿優しげな潮風の吹く、海沿い。



陽の光に青い海がきらきらと輝き、その景色を眺め…男は云った。



「いやあ、善い天気！」



大人の余裕も兼ね備えた美麗な顔立ちに、黄水晶の様な金色の瞳。桜色の髪をした男性だった。長い前髪で右目が隠れ、左の襟足が長い。不対象な髪型だ。


彼の名前は、藤崎翔。年齢二十七歳。職業不安定。独身。



そう、独身である。早い所結婚しなければ死ぬ。最近は三食カップラーメンで済まし、仕事は滅多に入って来ない。


これ次期に死ぬわ。藤崎本人もそれは判って居る。でもカップラーメンは楽だし美味い。


そろそろ、それなりの高い酒も飲みたくなった。だから今は釣りをしているのだ。



然し、近くの看板には『釣った魚は海に帰しましょう』と云う規則の文字。キャッチアンドリリースが絶対らしい。



＿＿＿＿だが。




「なーにがキャッチアンドリリースだよ！規則は破る為にあるからな！俺の場合はキャッチアンドセル(売る)だ！！」



声高々に犯罪を宣言しながら、煙草に火を付けて咥える。そうして獲物が掛かるのを待つ。


職業不安定、三食インスタント。酒、煙草。釣った魚を許可無く売ろうとする不法行為。


要は正真正銘の『駄目人間』だ。取り柄はその無駄な美貌。




「うっしゃ！鮪(まぐろ)釣るぞ！」




目標は巨大鮪だ。自分の身長を超える位の。何て有り得ない事を考えつつ、灰色の煙を吐く。人差し指と中指の間で煙草を挟んで持ち、空へ流れゆく灰色の煙を、金色の瞳で見送った。



彼の手には白い手袋。藤崎が人前で素手を晒す事は滅多に無い。それには何か意味があるのか。




突如、竿が曲がった。突然の事に藤崎も驚き、ぽとりと煙草を地面に落とした。



「お？おどんおお落ち着け俺！ま、まぐろだあ！！」



慌てながらも竿を引く。この掛かり様、絶対に鮪。それも大きい。今夜は高い酒が飲めるぜと期待に胸を膨らませ、にぃ、と口角を上げて一気に釣り上げた。



ばしゃーん！



海から釣り上げたのは、巨大鮪………否。



意識の無い人間だった。砂色の外套を来た人間。顔は髪で隠れて見えない。藤崎は突然の人間の姿に、石の様に固まってしまった。そして考え、思い付く。




「全く…俺が如何かしてたよ……規則は守る為にある。規則を守るのは人間の務めだよな。当然、キャッチアンドリリースだ」



前言撤回して爽やかに微笑むと、人間の足を掴んで海に戻そうと引き摺った。


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【要注意人物】

藤崎翔：年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。

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