Necromance11 ページ11
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武装探偵社、事務所。
電灯がチカチカと点滅する。椅子や書類が散乱した事務所。そこへ、桜色の髪をした男性が入り、バタンと扉を閉める。
普通の人間がこの場に入れば、悪寒や吐き気で立っては居られなくなる。
然し藤崎は何食わぬ表情できょろきょろと事務所を見渡した。すると中央奥の机の下からぐすぐすと泣きじゃくる声が聞こえた。
藤崎は奥の机まで足を運び、ひょいっと上から覗き込む。
「や、幽霊さん」
にぱっ、と明るく幽霊に語り掛け、手をひらひらと振る。
『ひゃあっ』
と幽霊は驚いて、部屋の隅にまで瞬間移動した。瞬間的に移動したにも関わらず、藤崎の目線はきちんと幽霊を追って居た。幽霊の思考が判る。幽霊と波長を通わす事が出来る。視覚を共有する事だって。
それが藤崎翔の異能力。名は『殺意の対談』。その名の通り、
後悔の念が強い霊と対話が出来る。
「あはは、そう驚かないでくれ。君を楽にさせてあげるだけだ」
見ると霊はまだ若い。中学生位の女の子と云った所か。にこやかに笑う藤崎に安堵したのか、霊の少女は警戒を解いた様に肩を下ろす。
「話せる人は初めて?」
『…うん、初めてです』
「成程、君…記憶が無い霊なんだね。だから成仏出来ない。そこで武装探偵社の噂を聞いた。解決してくれると思った。合ってる?」
透けた、可愛らしい少女はこくこくと頷く。じ、と藤崎が少女と目を合わせると、おろおろと少女は目を逸らす。
「…成仏は辞めた方が善い。君は地獄行きだ」
『ど…どうして。私、何も悪い事…』
「君は悪い子だよ。俺は君の過去が視える。地獄は怖いなあ。
舌を抜かれるかな?目を抉られる?いやあ怖い怖い」
へらへらと笑う藤崎。少女は『嫌…』と涙ぐむ。
____人の心は、絶望の縁に立たされた時に何かを縋る様になる。意味も無く。ただそこに意味があったとしたら。それは大いなる希望と化す。
例えそれが、呪縛であったとしても。
「君さえ善ければ、俺と記憶を探そう。俺は死霊術師だ。それまでは君を縛る形になるけど」
と、藤崎は霊の少女に手を差し伸べた。誰にも気付いて貰えない孤独な少女は、安易に悪魔の手を取って仕舞う。
少女の手が藤崎に触れた瞬間、少女の霊体は火の玉の様になる。
するりと右手袋を外し、露出した手で火の玉を手中に収めて…
口角を上げる。
「何て単純で、可愛らしいな」
閉じ込める様に、直ぐにまた白い手袋をした。
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【要注意人物】
藤崎翔:年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。
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χCielχ(プロフ) - 奏汰さん» ありがとうございます〜〜!!嬉しいです!!!! (2019年7月19日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
奏汰(プロフ) - めちゃくちゃ好きです。 (2019年7月17日 2時) (レス) id: d623967004 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» だめですねぇ笑笑←藤崎の方がいい匂いするらしいです( ˇωˇ )(煙草臭除けば) (2019年6月26日 1時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - χCielχさん» わーい!いい匂いだ〜!素晴らしいなぁ〜!!みたいな感じで天に召されてくれませんかね、幽霊さんたち。……ダメですか?(´・ω・`) (2019年6月11日 0時) (レス) id: d74fa5c180 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ロトさん» いい匂いになるだけですね!? (2019年6月2日 10時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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