君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage９２ ページ42

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＿＿＿＿彼奴は、帰って来ない。














絶対的権力者、ポートマフィア首領の命令に違反し、太宰の声がした方へ高速で向かう。霧にはなれるが、瞬間移動が出来る訳では無い。


レイがして居るのは、『霧化』と『飛行』の二つだ。道理で血の力を消耗する筈だ。雑木林の上空をを移動する。


そろそろ血の力を節約しなくてはならないと思い、雑木林の中に着地する。ちゃんと血の力の配分を、『考えられる』様になったのだ。太宰の教育の賜物だ。


『考える力』が、だんだんと身について来ている。然し……考えなくても善い事まで、考えられる様になって仕舞った。レイは想像以上に学習能力があった。




＿＿＿＿織田作！！




遠くで聞こえた太宰の声。それと同時に、雑木林を抜けた。レイの目の前に広がったのは、大きな洋館と、並ぶ死体。


ズタズタに幾つも風穴の空いた扉。開きっぱなしの扉の向こうに、血濡れの織田を抱える太宰の姿。





遅かった。





遅かった、遅かった。また護れなかった。護る時に護れないこの力は一体何の為にある。何の、為に、




呼吸が乱れた。薔薇色の瞳が揺れた。



さくさくと音を立てて、ゆっくり雑草の上を歩く。洋館の中の二人の会話を聞きながら。下を向きながら歩くと、ひとつの草花が目に入った。


そよ風に靡くコバルトブルーの花弁。レイは屈み込み、小さな草花を幾つか取った。








洋館の内部に入り、広間に足を踏み入れた。既に立ち上がって居た太宰。太宰は静かに振り返った。左目の包帯は無かった。




「…だざい」




「……やあ、レイ君。遅かったじゃない」



何も太宰も、責める心算で云った訳では無い。仮にレイが間に合ったとして、この状況を変えられたか如何かは判らない。そんな物、誰にも判らない。


けれどもレイの性格は、お人好しで…誰の所為でも無い事を自分の所為にして、感情を自身の中に閉じ込める。そんなレイはこう思うだろう。



「自分の力が足りなかった、とでも思って居るのかい」



何時も無表情なレイが、苦しそうな顔で黙り込んだ。これは肯定を意味する。嗚呼矢張り。彼は優し過ぎる。




「……君の所為じゃあない。確かに…私は君を呼んだ。君なら…。いや、よそう。レイ君が本当に来るなんて…とてもじゃないけど、思わなかったからね」



そうして太宰はレイとすれ違い、洋館の外を照らす夕陽を眺めた。




「レイ君。…私と織田作の会話を、聞いて居たのだろう？」


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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