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「中原くん」
「ンだよ」
鷗外との取引の後。中原と北森は、再び長い廊下を歩いていた。北森は腹を押さえて、態とらしい演技をする。
「痛いんだけど…これだけの会談の為に殴られて蹴られて、と云うか痛め付ける意味あったんでしょうか」
北森が真顔で被害者面をして中原に云うと、中原は目を合わせずキッパリと伝える。
「特に無ェ」
「最低」
「手前には云われたくねぇよ」
北森が銃を扱ったと知った時、中原は如何思っただろうか。別に大した事は思っていなさそうだが…今回の取引で北森は敵でも味方でも無い『中立』の人間になった。
昇降機に乗り、ビルを下る。
何も云わずに中原の後を付いて行くと、駐車場まで来た。
「おい、何時まで付いてくんだよ」
「…あ、ごめん。もう付いて行かなくて善かった?」
どれだけボロボロになろうと、にこやかに笑う北森。中原はへらへらした人間が一番気に食わない。
最近はそんな北森の作り笑いが、不気味でしか無い。
中原は何も答えず、車に乗り込んだ。
「ねえ」
あどけない青年の声が聞こえた。青年から笑顔が消え、切なそうな顔をして居たので、中原は思わず彼をじっと見詰めた。
「来てね、コンビニ。俺…待ってるから」
エンジンが掛かる音と、青年が言葉を発したのが同時だった。
「あ?悪ィ、何て?」
「…ううん」
ぱっ、と笑顔の仮面を貼り付けた。嗚呼、悪い癖だ。
踵を返して、歩いて帰る事にした。
「乗せろ、とは云わねェのかよ」
ぴたり、と北森の足取りが止まった。
何時もなら、北森の方から図々しく乗せろ乗せろと五月蝿く云う癖に、今日は弱々しくて中原の調子も狂う。
「…云う訳無いでしょ」
「じゃあ乗れ。クソ森」
振り返ると、口角を上げた中原の何時も通りの顔。普段気にも止めなかった中原の一寸した表情が、今じゃ嬉しくて仕方無かった。
「…何、それ」
無表情で、掠れた声で云う。
中原の車に乗り込んだ。
「中原くんは、案外お人好しだよね」
「何云ッてやがる。あと何だ、名前では呼ばねェのか」
「え…何の事?」
無意識かよ。と思い、中原は車を出す。
何度か乗って来た中原が運転する車。不覚にも安心して、うとうとして来る。
「寝ろよ。別に殺さねぇし」
云う前に、北森は寝て居た。こう云った一面を見ると、まだ子供なのだと思う。
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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