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「鴻君、鴻君!」
口を抑えて座り込んだ北森の肩を強く掴んで名を呼んだ。
「ちが、違う、違う!違う!俺は、俺が」
正直太宰も驚いた。
この青年…北森鴻の顔、背丈そのものの人造人間が保管されて居たのだ。それも一体では無い。
十…それ所では無い。百は超えた数の人造人間。それら全てが、『北森鴻』だったのだ。
「れは、あの…時に、殺したのは、俺?俺は、偽物?本物は、俺じゃ、違う、俺が…!絶対に…!」
金色の瞳。その瞳孔は開いて、揺れて。ガクガクと身を震わせ、独り言の様にぶつぶつと必死に云い始めた。
ふと青年は思った。当たり前の様に学業を成せる。こんな痩せ型なのに、運動能力も周りとは違う。
人造人間を殺す、殺す、殺すと云って置いて、自分が人造人間の可能性も充分にあるではないか。寧ろそうなのでは無いか?
ぴた、と北森の苦しそうな喘ぎが止まった。
急に落ち着いた。だが違う。この場合の北森は、何か異常を来している。
太宰が掴む青年の肩が、愉快そうに揺れた。
「____っふは、あは、あははは!」
笑いが止まらなかった。そうだ、そうだよ。自身が本物だろうが人造人間だろうが関係無い。
全部殺せば結局は同じだろう?
太宰を振り払って、人造人間を保存してある大きな硝子製のカプセルに発砲。硝子はぱりんと割れ、中の溶液が漏れ出す。銃弾は人造人間の眉間に命中。
死んじゃえ、死んじまえ。俺は、俺だけでいい。
自分の顔をした邪魔な人造人間を悉く殺害して行くのが、楽しくて仕方が無い。今どれ程殺しただろうか?十、二十そこらか?ならばまだ楽しめるな。
「はは、死ねよ」
ぱん、と更に発砲。青年の正確な射撃。これ程まで正確だと、本当に自分は人造人間なのかも知れないと、そんな考えが過ぎるも関係無い。
がしり、と後ろから右の手首を取られた。
「ねえ、邪魔しないで!!」
振り向いてそう叫んだ。その瞬間だった。
ぱん、と発砲音ではない音が聞こえると共に、頬に痛みが走った。
その音がこの空間に響くと、今度は物音ひとつしない静寂がやって来た。
「……君らしくないじゃあないか」
砂色の外套。大切な人の顔が切なそうに歪んでいた。
「成す事全て完璧に熟す君だから、自分は人造人間かも知れないと疑って居るのだろう?残念だけど君は人間だよ。私と同じ、この世界に存在している、ね」
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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