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昇降機が下降する。昇降機内の端上に監視カメラが一台設置されて居たので、北森はそのカメラに向かって笑顔で手を振った。
カメラに銃口を向け、発砲。銃口から白く細い煙がふわりと吹いては消える。
目的の階に到着し、昇降機の扉が開いた。警備の一人や二人位待ち伏せて居ると思って銃を構えるも、そこはがらんどうとして居た。
「何だ、拍子抜けだな」
肩を落として、構えていた拳銃を降ろした。歩き始めると、自分の足音が不気味な程に響いた。それ程静かなのだ。この階は。
余り足音を立てない様に進んで行く。すると、曲がり角の向こうから…コツンコツンと足音が聞こえた。
何か来る。
北森は角に隠れて、壁に背中を付けてそれを待ち伏せた。何時でも撃てる。
足音が段々大きくなって来る。その距離僅か五メートル足らず。足音の正体が角を曲がって来た。大きな影だ。
カチャ、と音を立て、北森はその影に素早く銃を向ける。
「うわぁあ!ま、待って鴻君!私だよ、私!」
その容姿は黒髪の蓬髪。砂色の外套。太宰だった。太宰は両手を上げて「撃たないで」と意思表示をした。
撃たれて一瞬で死ねる事は善いが、相手は北森だ。北森が太宰を殺して仕舞えば、直ぐに後を追って来るだろう。そうなれば折角の輝く黄泉の国ライフが、二十四時間北森の監視制になる。黄泉の国も楽しめた物ではない。
故に、北森だけには殺される訳には行かない。絶対に。
「お、おさ…」
太宰に拳銃を向けた。四年前、狙撃銃で太宰を殺そうとして居た事を思い出すと吐き気がする程自分が恨めしくなるのに、今は直接太宰に銃口を向けているのだ。
青年の手や身体がふるふると震えた。自然と、銃口を自身のこめかみに押し付ける。そのまま引き金を引こうと考えた。
「ちょ、一寸一寸!ストップ!」
太宰が間一髪で北森の手首を掴んで、青年の自害を阻止した。
「死ぬ!俺死ぬから!死にます!!」
「落ち着き給え!はい深呼吸!」
拳銃を取り合う太宰と北森。北森は「俺は死ぬんだ」と云って聞かない。太宰は青年の両肩を強く掴んで揺さぶった。
「君に死なれては困るよ、鴻君」
「な、こ、こま…?」
酷く混乱する青年。普段、この青年のこんな様子は見れない為、少し面白い。それにしても、如何やってここまで来れたのだろう。太宰は思った。
然し青年の口元に赤い紅が付いて居たので、直ぐにそれを察した。
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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