検索窓
今日:25 hit、昨日:9 hit、合計:448,876 hit

percentage31 ページ31

_





辺りが静かになった。



感情のままに身を任せていて、頭が冷えた時にはしまったと思った。



太宰から受け取った銃を落とした。その銃には既に銃弾もなく、空だった。この場に居たのは計五人の男。銃には五発しか弾が込められて居なかった。



その時に悟った。全て太宰の策だったのだと。




太宰は、『北森鴻』ではなく『隼』を見ていたと云う事か。
今まで、ずっと。





「やぁ、凄い腕前だったよ。流石は『隼』だ」




後ろから太宰の声がした。北森は振り返らなかった。どんな顔をして、太宰を見れば善いか判らない。




「…治く____」




北森の背から腹を、一発の銃弾が貫いた。まるで、そう呼ぶ事を
拒絶された様に。



次に逃げられぬよう、太腿を撃ち抜かれた。




太宰の部下である大勢の黒服が、この路地で北森を包囲した。
沢山の銃を構える音がした。



腹と腿を撃ち抜かれても、ふらふらと立っていた北森。もう一発撃とうと、黒服が引き金に指を掛けた。





「それ以上撃つな」




それを止めたのは、何時もより少し低い太宰の声だった。




「その子はもう脅威じゃない。銃を下ろして」




周りの黒服が銃を下ろすのと同時に、北森はガクッと膝から落ちた。倒れまいと支える様に、血が広がる地面に手を着く。





「有難う、『隼』。私を護ってくれたのだよね。私の罠だとも知らずに」




嗚呼、本当に可笑しいなぁ。直感的にそう思った北森は、痛みに歪んだ笑みを見せた。


北森の呼吸が乱れる。寒くて白い息が、雲のように吐き出される。





「未だ期待して居るのかい?云った筈だよ。必ず君の翼を落とすと」




太宰は、北森の目の前に立った。



暗くて冷たい太宰を、北森は虚ろな目で見上げた。



その瞳に、期待など微塵も宿っていなかった。あるのは無だった。何も無い、無だった。




口の端から、血が垂れた。






「今、私の困った犬が財閥を手に掛けてね。皆殺しにしてしまったのだよ。君が殺した五人が、最後の財閥派だった様だ」




太宰は北森の前に立ったまま、見下ろす様にして云う。




「君には色々吐いて貰わなくちゃあいけない。だから殺さない」




____さぁ、何か云ってご覧よ。




その悪い口で…何時もの様に。殺してやるとでも。


















「…無事、で、…善かった」





フッ、と彼は倒れた。




こればかりは、私も驚かされた。






憎んでくれた方が、何億倍も善かったのに。




_

percentage32→←percentage30



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (404 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
846人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

χCielχ(プロフ) - 桜月さん» 昔の作品ですが、自分でも書いててすごく楽しかった思い出があります😌キャラの濃い夢主君でしたが楽しんでいただけたようで何よりでございます!出会うことが出来て良かった作品と言っていただけて本当に嬉しいです、見つけてくれて有難うございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 北森くんと太宰さんの関係が少しせつないけれど、、でも微笑ましくて、、腹黒で太宰さんloveな素の北森くんがとっても最高でした!!本当に涙なしでは読めなくらい感動しました!このような素敵な作品や北森くんに出会うことができて本当に良かったです!大好きです!! (2021年11月18日 21時) (レス) id: 125cb29da4 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» その三人ともちろん安吾さんも北森の大事な人になっています!!北森はめちゃくちゃ意地悪な子ですへへへへ...!黒の時代のミミックと対峙した所は原作、それ以外は全てオリジナルでございます!約9割ほどがオリジナルかと思われます!続編は完全オリジナルです!!! (2019年9月11日 22時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 北森くんの心を、太宰さん、織田作之助さん、中也さんの、三人でとかす物語ですね。北森くんの性格はおもぃっ切り意地悪のようですね汗。原作沿いのようですが?とりあえずハッピーエンドで続編ですね。余談?マフィアが、マリオカートで勝負って笑笑。 (2019年9月11日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 刹那さん» すすすす全て!?ありがとうございます…!こーくんですか!依存すごいですがありがとうございます嬉しいです! (2019年4月21日 14時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:χCielχ | 作者ホームページ:χCielχ  
作成日時:2018年12月8日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。