第五十五舞『衰弱した独尊』 ページ5
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「…で?」
アイザックが、不機嫌そうに腕を組んだ。
未だ立てもせず、寝台に上半身だけ起こして太宰と会話をして居た。
「何でぐちゃぐちゃなんだよ、このザッハトルテ」
先程、太宰が落とした洋菓子の箱から、変形したものが出てきたのだ。
「いや何ね、てっきり君が死んでしまったと思ったものだから」
「勝手に殺すなよ!」
にこにことする太宰に、アイザックは掴み掛かろうとする。
しかし上手く動かない足の所為で、掴み掛かった手は届かなかった。
「うわ…!」
そのまま寝台から転げ落ちた。
「あはは!届かない届かなァい!今の君なんて、微塵も怖くないよ!」
「…覚えてろよあんた」
手を使って体を起こし、青筋を立てて太宰を睨み付けた。
そして自力で寝台に這い上がる。
ふと太宰の腹部を見た。
「…刺されたとこ、大丈夫なのか?」
アイザックは、三ヶ月前の怪我を気にして居た。
「平気だよ。三ヶ月も経って居るからね」
太宰の話を聞いて、ぎょっとした。
それ程眠っていたとは思わなかったからだ。
「…それ、食べる」
アイザックは、変形した洋菓子を指差した。
「え?でも、こんなに滅茶苦茶になってるよ?」
「俺が食いたいから食うだけ。駄目なの?」
アイザックは太宰を下から覗き込むようにして云う。
太宰は仕方無く、ぐちゃぐちゃになった洋菓子を差し出した。
「あ、これ新作のやつか!俺、これ食べて見たかった!」
少年の様に目を輝かせた。
一口食べると、その美味しさにふわりと表情が柔らかくなる。
「…美味い」
アイザックはフォークを咥えたまま、太宰の方を見る。
「そうかい?並んだ甲斐があったよ」
「それで、遅かったのか…ありがとな」
ふい、と目を逸らして礼を云う。
太宰は、アイザックの照れ臭そうな行動に微笑した。
「どういたしまして。でももう一寸感謝し給え!入水を惜しんでまで買ったのだよ!」
するとアイザックは、大好物の苺をフォークに突き刺して、太宰の方に向けた。
「お遣いどうも。ご褒美」
アイザックが苺を譲るなど、何かの病気かと疑った。
彼の少し色気の混じった表情に、太宰はやれやれと頭を抱えた。
「そりゃ君、ゴロツキでも女性に寄られるよ」
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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