第八十一舞『精強を牛耳れ』 ページ31
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「普通かな」
太宰は小さく頷き、スープの感想を云う。
「は!?お世辞でも美味いって云えよ!」
「だって君、すぐ調子に乗るじゃないか!」
確かに、スープだけは悪くないが…下手に調子に乗られて部屋中丸焦げにされたら辛い。
アイザックを見ると、むすくれた様に頬を膨らませて居た。
珍しい顔だ。
「ふふ」
そんなアイザックを見て、太宰は可笑しくて笑った。
出会った当初は目も合わさないし、目が合った時は必ず鋭い目付きをしていた。
その時と比べれば、随分柔らかくなったものだ。
「何笑ってんだよ」
「いや?」
にこにこと太宰はアイザックの質問を受け流す。太宰の表情に、アイザックは溜め息を吐く。
「でさ、アイザ君」
腕を組み、アイザックは横目で太宰の方に視線を向ける。すると、驚いた。
太宰が、ドストエフスキーから貰った銀のピアスを持っていたのだ。
「これ、なァに?」
変わらない太宰の表情に、冷や汗が首筋をつぅっと伝ったのが判った。
「…いや、それは買った。着けようと思ってな」
アイザックは平然とした顔で、太宰の持っているピアスを取り返そうと、手を伸ばした。
太宰は、それを阻止する様に手を後ろに引いた。
「駄目。嘘が上手過ぎて不自然だ」
太宰は銀色のピアスを眺めて、ふむふむと考え出した。
「…上質な白銀だね。確かに君が好みそうな型のピアスだ。でも、君は今お金を持って居ないし、あの冊にはお金の場所も書いて無かった」
____拙い。
それを失えば…異能兵器の阻止の仕方が、
「君は強いけど、単純だ。信頼が無くてもその単純さに漬け込める」
次に太宰と目があった時には、太宰の瞳に光は宿って居なかった。
「誰に貰ったの?」
「…ッ、知るかよ。関係無いだろ!」
アイザックは、半ば
太宰は、呆れた様にアイザックを見下ろした。
「関係無い、ねぇ…?どの口が云うのだか」
太宰が云うと、心臓が高鳴った。精神も身体も支配された感覚に陥った。
矢張り勝手に取引なんかして、怒らせたか。
アイザックは、ふらふらと後退りをして、壁に背を付けた。
「誰?ちゃんと云って」
アイザックは ぐっと口を噤むも、その口は太宰の一言で容易く開いた。
「白い帽子に…黒髪の、男」
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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