I wanna be a hero.

thirty - one ページ34

彩ｓｉｄｅ

いよいよ、明日、お父さんが帰ってくる。

私が家出してから、お母さんは、私のことを無視するようになった。

本当に、無視。まるで、私は居ないかのように扱われている。

大量の参考書も押し付けてこなければ、食事だって準備すらされない。

目も合わないし、話しかけれることも、何もない。

最初はそれでも良いし、むしろ、ほっとしてた。

けれど、それが一週間以上続いてくると、流石に辛くなって。

ほんと、もう、さ、これだけ嫌われてるのに、

お母さんを嫌いになれない、自分の方が嫌になってくるよね。

それでも、辛くなったら、相川さんに電話して、歌ってみたとかのお話をして、

前よりは、笑うことが多くなっていた。

学校には行ってない。

家出した時に渡された参考書を、自分がこなせるペースで少しずつやって、

家で勉強をしてるから、遅れは取ってないつもり。

流石に、自分でも分かるくらい細いし、やつれてるから、

学校に行ったら、忍でなくとも、悠飛やマリンに気づかれてしまう。

だから、学校には行ってないし、行かなくても、もう、いいかなって。

だって、行こうが行くまいが、お母さんは何も言いやしない。

秀明も休んで、、、というか、秀明はもう辞めた。

お母さんが勝手に退塾届を出していたみたい。

言わなくても分かることだけど、もう、私にお金をかけるのは辞めたらしい。

その空いた時間で、歌い手になるべく、調べ物やその勉強をしてる。

たまに、相川さんと食事に出掛けたりもするけど。

お金はいつも払ってもらっちゃってるから、いつか、絶対に返す。

お金だけじゃない。

相川さんにはとても返しきれないほどの、”もらったもの”がある。

少しずつ 少しずつ、その恩を返さていけたらなって思ってる。



夜もふけ、私はお父さんに、一通のメールを送った。

・・・これでもう、後戻りはできない。


「明日の夜、お父さんに話したいことがあります。聞いてくれますか？」

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