49：君の方が ページ49
○——なあ、どっか飯食いに行かん？
始まりはゾムのその一言だった。
Aは久し振りに通学で使う、学校の最寄り駅に降り立った。平日の昼時、お盆も過ぎたことで駅内もその周辺も人がまばらで比較的静かだった。
通学時もこれくらい静かでゆったり出来れば良いのにな。なんて叶うはずもない願いを心の中で呟いて、いつもの改札口へと向かう。先程携帯で時刻を確認した所、集合時間の十分前だったので余裕はある。緩やかな足取りで駅内を進んでいく。
人混みに邪魔されることなく改札を楽々と通ったAは早速目的の人影を探し始める。するとすぐに柱を背にして携帯をいじっている緑色が視界に映った。その瞬間、僅かに口元を緩ませた彼女はその人物の下へと歩いていく。
その途中で偶然か、それとも彼女の気配に気付いたのか、不意に彼が顔を上げる。視線が交差した次の瞬間、彼もまたその口元に笑みを浮かべた。
「ちっす。来たな」
「ごめん、待たせちゃった？」
「いんや、俺もさっき来たとこやから大丈夫やって。ほな行こか。あー……めっちゃ腹減った」
「ふふ。私も」
携帯をズボンのポケットに仕舞ったゾムがくるりと身を翻す。普段より少し元気のないその声に本当に腹を空かしているのが感じられてAは思わずクスリと笑った。そんな彼の後ろ姿についていきながら、事前に二人で決めた駅近の有名なファストフード店へと向かった。
昨日突然、彼女の携帯にゾムからのメッセージが届いたのが始まりだった。何でも彼が、家で遊ばせてもらったお礼がしたいとのことで、考えた末に思い付いたそれが食事の誘いだったのだ。
そう言えば彼女とはこの短い間で大分親しくなったけれど、ご飯を共にしたことが一度もないとゾムは気付いた。学校にいた頃はそれぞれの友達と昼休みを過ごしていたから実は一緒にご飯を食べることはなかったのだ。
なので今回良い機会だと思い、彼からそのような提案がなされたのだ。勿論お礼と言うことなので、彼女の食費は彼が持つという形で。
一緒にご飯に行くのは構わないが、Aは最初奢られることに少し抵抗を見せていた。誘ってくれただけでも十分嬉しいからお金は自分で出すよと返してみたが、それじゃあお礼にならないと彼が納得を示さなかった。結局彼の押しの強さにAが負ける形でその話は終わった。
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます！面白いと言って頂けてとても嬉しいです！これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます！ (2022年4月17日 12時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜！！本当に面白いです！！まさかのライバル？！誰なんだ…続きも楽しみにしてます！ (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2022年3月14日 15時
