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中に入れば外界よりも低い気温に包まれる。ようやくあの強烈な紫外線から逃れられたと安心した二人の顔に疲労混じりの笑みが零れた。
 すん、と鼻で息をすれば他人(ひと)の家の匂いがする。今でも付き合いの長い悪友の家に遊びに行っているので自分の家とは違うそれに慣れている方だと思っていたのだが。初めて嗅ぐ匂いと言うのはやはり落ち着かないものだ。何だかこういうのは久し振りに感じた、とゾムはそう思いながら中へと上がった。
 
 
「……え、お前ん家、凄ない?」
「そ、そう、かな?」
 
 リビングに通された瞬間、ゾムは目に飛び込んできた光景に思わず固まった。
 家電量販店でしか見たことのないような大画面のテレビ、テレビボードの棚にずらりと並ぶ据置型のゲーム機。それとそのボードの隣にある大きな本棚には従来収まっているべき本は無く、代わりにゲームのパッケージがみっちりと詰まっていた。
 今まで見たことのない光景。ゲーム好きの一家だとは聞いていたけれど、まさかこんなゲーマーにはたまらないような環境が整っているとは思いも寄らなかった。
 
 もはや凄いとしか言葉が出て来なかったゾムはしばしそれを呆然と見つめていたが、彼女に飲み物をどうするかと訊かれてようやく我に返った。幾つか差し出された飲み物の選択肢から一つ選ぶと「座って待ってて」そう言って彼女がリビングと直接繋がっているキッチンへと向かっていった。
 「なあ、あのゲームの棚見てええか?」その背中にゾムは咄嗟にそう声を掛けた。振り返った彼女がゾムを見て、そしておそらく対象らしきものを一瞥してから笑って頷いた。

 それに表情を明るくした彼が早速ゲーム棚へと向かい、綺麗に並べられたそれらをじっくりと眺めた。超有名なシリーズからコアなものまで。今では手に入らない幻のものもあれば高値で取引されるものまである。
 これは全部彼女の父親のものなのだろうか。これほど揃っているとは本当にゲームオタクなのだろう。ああ、自分が以前やってみたかったゲームまで揃っている。
 驚きと感動に目を輝かせる彼の横顔をAは微笑ましそうに見つめた後、キッチンの中へと入っていった。
 
 
 
「そうそう。そこに入って……」
「あ、ここか……って、おわ! なんやこれ! 敵か⁉︎」
「その敵はね……おお、上手い上手い!」
「ちょ、まっ、あ、む、ムズいって……っ」

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作品ジャンル:恋愛
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます!面白いと言って頂けてとても嬉しいです!これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます! (2022年4月17日 12時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜!!本当に面白いです!!まさかのライバル?!誰なんだ…続きも楽しみにしてます! (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:抹茶ちよこ | 作成日時:2022年3月14日 15時

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