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少し時間が経ってから帰ってきたAの視界に映ったのは目的の箱を高々と掲げる鬱と、彼と喜び合うメンバーの姿だった。それに驚き、同時に胸の奥から湧き上がる喜びに突き動かされて彼女は歩く速度を早めた。
 凄い、おめでとう。その言葉を掛けようと彼らに近付いていくとそれに気付いたゾムがこちらへと顔を向けた。すると友人達の側から離れて、一直線に彼女の方へと歩いていく。
 目の前に立ちはだかった彼にAはきょとんと目を丸くした。
 
 ほい、と彼が背中に隠していた片手を前に差し出す。自然とその手の中にあるものに視線を落としたAは瞬時に「えっ⁉︎」と今まで一番大きな声を上げた。
 そこにはあの猫のぬいぐるみがあったのだ。
 
「と、鳥井君が、取ったの?」
「せやで」
「す、凄い……!」
「これAさんにあげるわ」
 
 ゾムのその言葉に彼女の口から本日二回目の大きな声が上がった。目を大きく見開いた彼女の反応があまりにも予想通りすぎて面白いと思ったゾムは口角を吊り上げた。
 
「えっ、い、いいの?」
「おん。やってその為に取ったんやし」
「う、嬉しいけど、何で……?」
「あー……その、いつも仲良うしてくれるし、今日やって、急やったのに俺らに付き合ってくれたし。その、日頃の感謝? みたいなもんや」
 
 言葉を並べている内に気恥ずかしくなった彼が視線を逸らす。そしてぬいぐるみに視線を落とすと、ずいっと更にそれを彼女の方へ近付ける。
 距離が縮まったそれと彼をAは戸惑いながら交互に見る。口を閉じて少しだけ思案した後、おずおずと目の前のそれに両手を伸ばした。そして彼の手からそれを受け取り、自分の方へと引き寄せる。
 あれほど欲しいと願っていたものが今手元にある。その現実を確かめるように猫の毛並みを撫でてみる。ふわふわの質感が掌から伝わってくるとAの頬が思わず緩んだ。
 
 胸の奥から熱いものが込み上げてきた彼女はぱっと顔を上げた。
 
 
「鳥井君、ありがとう!」
 
 そう言って満面の笑みを咲かせた。
 ゾムはそんな彼女の心の底から喜ぶ顔に思わずドキリと頬を赤くした。

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作品ジャンル:恋愛
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抹茶ちよこ(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます!面白いと言って頂けてとても嬉しいです!これからもどうぞ温かい目で見てやって下さい。ありがとうございます! (2022年4月17日 12時) (レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - うわぁ〜〜!!本当に面白いです!!まさかのライバル?!誰なんだ…続きも楽しみにしてます! (2022年4月15日 0時) (レス) @page39 id: 503fd2a4ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:抹茶ちよこ | 作成日時:2022年3月14日 15時

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