□放課後 ページ1
.
チャイムと同時に、生徒たちが鞄を持って各々行くべき場へと向かう。
Aもそのうちの1人だった。
机の中に忍ばせておいたスマホをワイシャツの胸ポケットに入れ、弁当袋を鞄に突っ込み、椅子を机の上に上げて、さっさと教室を後にする。
向かう場所はいつもと同じ。
放課後は必ず寄っている。
廊下で騒ぎ立てる生徒を避け、階段を勢いよく降り、胸を躍らせ、あっという間に1階へ。
職員室があるので、走るのを一旦やめ、ゆっくりと歩いて目的地目の前の窓辺に背を預ける。
掃除が終わるのを待つ間、鏡を取り出して、前髪が崩れていないか、髪がボサボサじゃないか、身だしなみをこれでもかというほど整える。
いつも好きな人に会いに行くときは、何度でも、繰り返し身だしなみを整える。
きっと理屈はなく本能なのだろう。
しばらくして掃除当番の生徒たちが教室から出てきて、Aはスマホをいじるのをやめた。
ふぅ、とひとつ息を吐き、吸う。
落ち着かせるように胸の前に手をやり____よしっ。
最後のチェックに鏡をもう一度見て、ひとつ頷いた。
『失礼します！！』
ドアを開けると密閉されていた部屋の空気がふっと動き、鼻に保健室特有の強い消毒液の匂いがツーンと響く。
クーラーの効いた保健室は少し寒く、そんな空気を逃さないように急いで後ろ手でドアを閉めた。
「……怪我がないなら寄るな、といつも言ってるよな？」
文庫本を読むのを中断し、不機嫌そうに言い放つこの男こそが絶賛片思い中の相手であり、去年異動してきた養護教諭トラファルガー・ローだった。
冷酷であり、眉間に深い縦縞を刻みながらもその低い声と容姿にAはきゅんとせざるを得ない。
『センセー！センセー！！聞いてください！』
ガン無視し再び本を読み始めるロー。
口を開かなかったが重ね重ねの不愉快感のあるオーラを解き放っていた。
Aは保健室に設備されているソファに荷物を置き、
『今日、ミンゴ先生が抜き打ちでテストしてー』
「全問不正解だったか」
『全問正解でした〜』
残念でした〜と付け加えられるくらいの煽りスキル高めの発言をかますA。
『なので褒めてください！』
「お前に構う時間がもったいねぇ」
『センセ〜』
身を乗り出しながら頼んだものの玉砕。
おとなしく荷物の横に腰をかけた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるさめ(プロフ) - あの、最初の6~7ページかが名前になってて設定した名前に変換されてません。そしてこの作品凄く面白いですね！まだまだ最初部分しか見れてませんが…頑張ってください！応援してます！ (2023年3月1日 15時) (
レス) @page7 id: 299e20c6a9 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり(プロフ) - あんちょろさん» コメントありがとうございます！遅いですが夜勤頑張ってください！夜更新が多いので気長に待っていただければ…送別会は割と力入れるので楽しみにしていてください！ (2022年10月22日 9時) (レス) id: f1de8a3da7 (このIDを非表示/違反報告)
おにぎり(プロフ) - ききぽんぬさん» コメントありがとうございます！読んでいただいて光栄です！お気に入り登録もありがとうございます😭更新頑張ります！ (2022年10月22日 9時) (レス) id: f1de8a3da7 (このIDを非表示/違反報告)
あんちょろ(プロフ) - 夜勤なうなのにもう送別会編が気になって眠れません（夜勤だから寝るな！） (2022年10月21日 23時) (レス) @page45 id: 67b3a9cf2e (このIDを非表示/違反報告)
ききぽんぬ(プロフ) - はじめまして、こんにちは！昨日、この作品と出会ってめちゃくちゃおもしろくてあっという間に全て読みました！続編が出来るということでとても嬉しく思います(*´﹀`*)嬉しいお知らせが届くのを楽しみにお気に入り登録させていただきました。これからも応援してます！ (2022年10月21日 11時) (レス) @page43 id: 79ed02044f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おにぎり。
| 作成日時：2022年10月5日 21時
