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感覚的にはそんな時間は経っていない
でも瞼を開くと、そこはさっきまで居たご飯屋さんではなく、見慣れた景色が広がっていた——
「あれ…私…」
まだ少し頭がふわふわしながらも、ようやくここが自分の家のベッドだということまでは理解出来た
「でも私、どうやって帰ってきたんだっけ…」
飛び飛びの記憶を呼び覚まそうにもまだ頭はぼーっとしていて、この感じからするとそんな時間は経ってない…？
とにかく時間を見ようと何処にあるかも分からないスマホを探そうと手を伸ばしたとき、右手に違和感を感じる——
「ん…？」
視界もぐらつく中、自分の手元に焦点を合わせると
そこには私の手を握ったままベッドに顔を伏せて恐らく眠ってしまっているであろう長尾くんの姿があった。
「長尾、くん…？」
塞がってない反対の手で頭を撫でると目が覚めたのかゆっくり顔をあげた長尾くんと目が合った
長尾「･･･ん、あ、俺まで寝てもうてた…」
まだ重たそうな瞼をこすりながら、繋がれていた手は誤魔化すかのようにそっと離される
長尾「･･･まだ、顔赤いな？水持ってくるから待っとき」
まだ頭がぼーっとするからなのか、
それとも今日感じてしまった気持ちのせいなのか、とにかくよく分からないけど離された手は咄嗟に彼の服の裾を掴んでいた
長尾「･･･なぁ、酔いすぎて、誰かと勘違いしとるん？」
「･･･、長、尾く…」
長尾「…俺やって、分かってるん…？」
「ごめん、ね。思い出作り、台無ししちゃった」
聞こえてくる長尾くんの声に更に酔いが回っていくような感覚に陥る——
長尾「なぁ、もう無理やって…」
「ん…？」
服を掴んでいたはずの手はまた長尾くんに握られて、今度はゆっくり指が絡んでいく…そのまま静かな部屋にベッドのスプリング音が響いた
虚な視界に写り込む長尾くんは私に跨りながらも表情はあの日のように歪めていて、一瞬で後悔してるのが伝わってくる
そんな顔、して欲しくない——繋がれてない手で彼の頬に触れれば、私の中に眠っていた感情がいとも簡単に溢れ出す
そのままゆっくり首に腕を回したのは私。
引き寄せたのも私。
もう少しで唇が触れる—その手前で止めたのも私。
いつもされてるみたいに
試そうとしたつもりだったのに、そんなの無意味なくらいに、あっという間にその距離は埋まる——
時刻は午前0時過ぎていた—
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作者名：fumi
| 作成日時：2022年5月14日 21時
