離れに住む刀剣男士達 (ページ7)

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6話ページ7

僕が疲れ果てて、歩く気力が失せた頃。
和泉守様の声が隣から聞こえた。

「もうすぐ着くぞ」

はっとして見上げると、僕を見下ろす和泉守様がいた。
和泉守様がふと、手を伸ばしてきた。

「……疲れただろう」

和泉守様は、僕の頭へ手を置いた。
そうして無造作にかきなでた。
髪は乱れてしまったけれど、僕の心はじんわりと温かくなった。

「……そらよ、負ぶされ」

和泉守様はその場で屈むと、両腕を後ろに回した。
子供扱いは苦手だ。けれど、こうされるのも偶には良いのかもしれない。

「……ありがとうございます」

小さくお礼を述べて、大きな肩を両手で掴んだ。
和泉守様はゆっくりと、慎重に立ち上がった。

「しっかり掴まってろよ」

和泉守様が前を見据えたまま、そう言った。
僕はそれに応えるように、和泉守様の肩を掴む力を少しだけ強くした。

和泉守様がこちらを見て、満面の笑みを浮かべた。
つられて僕も微笑んだ。

「よし、行くぞ」

和泉守様は、前を向くと地面を蹴った。
そして風を跳ね飛ばしながら、走り出した。

「くあ……」

疲れが原因だろうか。大きな欠伸が僕の口から漏れ出た。
和泉守様が走る速度を落とした。そうして立ち止まると、くすりと和泉守様は、小さく笑った。
僕の頬は恥ずかしさで赤く染まった。

「そんなに疲れているのなら、寝ていても良いぞ」

和泉守様はよく通る声で、優しくそう言った。
和泉守様の顔は、前を向いているままだから、表情までは分からなかった。
けれど、僕はどこか満たされたような気持ちになっていた。

「……おやすみ、主」

『おやすみ、僕の弟』

僕が瞼を閉じる瞬間、和泉守様が小さくそう呟いたような気がした。
そうしてそれに被さるように、懐かしい声が頭の中で響いていた。