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11話 ※刀剣男士同志で斬り合うシーンがあります。 ページ12

「不味いな」

和泉守様は、大和守様を険しい表情で見つめた。

「……退いてよ」

大和守様も、負けじと和泉守様を睨み返した。
いや、和泉守様ではない。
大和守様の瞳に映るのは、僕だ。

「退くわけねーだろ」

和泉守様は、腰に差した刀に手を掛けた。
まさか、斬り合いを始めるつもりなのだろうか。
先程までは、仲睦まじい様子だったというのに。

それに、大和守様の行動は先程からおかしかった。
それこそ、まるで別人がすり替わってしまったようだった。


「主!」

じっくりと考え込んでいると、必死に僕を呼ぶ声が耳に入ってきた。
思わず振り向くと、耳の横を冷たい風が通り過ぎて行った。

「……邪魔しないでよ、和泉守兼定」

大和守様が、此方を冷たく見据えていた。
大和守様の持つ刀が、僕のすぐ隣へと真っ直ぐに突き出していた。
すぐに和泉守様は、僕の前へと移動してきた。

「それは出来ねぇ」

和泉守様が、大和守様から繰り出される攻撃を刀で弾いた。
しかし、大和守様は何度弾かれようとも、攻撃を止めなかった。

むしろ、大和守様の攻撃は鋭さを増していった。
和泉守様が少しずつ、少しずつだが、押され始めた。

「……くっ」

和泉守様は、大分消耗していた。
それもそうだろう、休む間もなく突き出される力強く、速い刀を弾き続けているのだから。

大和守様は異常だった。
全く疲れた様子も見せずに、何の躊躇いもなく、和泉守様へと攻撃を続けた。

「兼さん!」

堀川様は呆然と、和泉守様と大和守様の斬り合いを眺めていた。
おそらく、目の前に広がる光景を信じたくはなかったのだろう。
しかし、和泉守様が押され始めると我に返り、刀身を鞘から取り出した。

「やめろ、国広!」

和泉守様が大和守様と向き合ったまま、そう叫んだ。
堀川様は一歩踏み出したが、その場で留まってしまった。

「……へぇ、加勢を断るんだ。大分疲れ切っているのに」

大和守様が、和泉守様を嘲り笑った。
堀川様は何かを言いかけたが、唇を噛んで堪えた。
和泉守様はもう、憔悴しきっていた。
立つのも、刀を持つのも儘ならなかった。
しかしそれでも、和泉守様は重い刀を大和守様に向けると、鋭く睨みつけた。

「いい加減、大和守を返せ」

「……僕に僕を返せ?何を言っているの」

僕は、驚いて和泉守様を凝視した。
大和守様も、訳が分からなさそうに首を傾げた。
何故か、堀川様と和泉守様は、不自然なくらいに落ち着いていた。

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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時

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