キミが残してくれたモノ (ページ9)

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Aちゃんに真実を伝えられたのは実樹ちゃんが亡くなった翌朝で、北山さん宅へ迎えに行った時だった。

大事な話があると口にすると、Aちゃんは無言で俺の顔をじっと見つめた。

表情からなにか感じ取ったのか、Aちゃんは目の前で正座をした。

Aちゃんの瞳は今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていて、それを見たら堪らない気持ちになって言葉より先に抱きしめていた。

「ごめんっAちゃん。ママは事故に遭って……もう会えないんだ……。ごめんね、Aちゃん……」

「パパっ……パパはどこにも行かないで！Aのことひとりにしないでっ！！」

「どこにも行かないよ！何があってもずっとずっと一緒だよ！」

「パパー！！やだよっAのことおいて行かないでー！」

俺に抱きつきながら必死に訴えかけてくるAちゃん。

Aちゃんは幼いながらもしっかりと現実を受け止め、懸命に思いを伝えてきてくれた。

だから俺もちゃんと目を見てAちゃんへ誓った。

「絶対どこにも行かないって約束する。パパはずっとAちゃんと一緒にいるからなんにも心配しなくていいよ。ねっ。」

実樹ちゃんの代わりに、俺がAちゃんを守って行くよ。

約束する。

Aちゃんにも、天国にいる実樹ちゃんにも……。

・

その夜、俺とAちゃんは、大好きだったママと永遠のさよならをした。

Aちゃんは最後まで涙を流すことはなく、逆にそれが堪らなく辛かった。

俺なんかよりもAちゃんはずっとずっと辛いはずなのに、小さな身体で全てを抱え込んでしまっているようで、見ていて胸が苦しくなる。

帰宅してからのAちゃんは、小さなテーブルに置かれたママの遺影の前から離れようとしなかった。

「Aちゃん、おいで。そろそろ寝ないと。」

黙ったまま俺の手を握ったAちゃんを見たら視界が滲んできて、慌ててそれを服で雑に拭った。

Aちゃんの部屋に入ると小さなベッドに自ら潜り込んで、目を瞑ってしまった。

「おやすみ。Aちゃんが寝るまでちゃんといるから、安心して寝ていいよ。」

「うん……。」

布団を掛けてあげて、Aちゃんが寝付くまでずっと頭を撫で続けた。

30分くらいして、やっとAちゃんからスヤスヤと寝息が聞こえてきた時は心底ほっとした。

俺は静かに立ち上がり、扉を閉めて散らかったままのリビングへと戻った。