キミが残してくれたモノ (ページ2)

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「実樹ちゃん、遅れてごめーん！」

「私達もついさっき来たとこだから大丈夫だよ。」

私の目の前に現れたのは、モデルさんみたいに背が高くてカッコいい、王子様だった。

「なんだ、よかったー。あっ、初めましてー。玉森裕太でーす。」

「ぁ……は、はじめまして……Aです。」

それなのに言葉は間延びしてゆるーい雰囲気を醸し出していて、とても不思議な人だなって幼いながらに思った。

綺麗なママとはお似合いだと思うけど、こんなカッコいい王子様が私のパパになるの？

この人、パパっていうよりもお兄さんみたいだよ？

「フフフッ。緊張してるーっ。俺のことは裕でも裕太でも好きなように呼んでね、Aちゃん。」

「ぇ……あ、うん。」

顔をくしゃっとしながら笑う顔を見た時、まだ恋を知らない私の心臓は、きゅんと音を立てた気がした。

それが私と裕太くんとの出逢いだった。

「ごめんね、裕太。Aは小さい時から恥ずかしがり屋で、初対面の人には緊張しちゃうの。」

「俺も人見知りだから仲間だねー！フフフッ。」

人懐こい笑顔で初対面の私に話しかけてくれる裕太くんは、どうみても人見知りのようには見えなかった。

「ここのお店の料理はどれも美味しいから、いっぱい食べてね。」

「……うん。」

「実樹ちゃんは食べ過ぎないようにねぇ。」

「あっ、ひどーい！」

「ンフフ。だって、いつも食べ過ぎて後悔してるでしょう？」

「そうだけどぉ。だって美味しいんだもん。」

裕太くんの言葉で頬を膨らませる仕草をしたママ。

こんな乙女な顔をするママを私は初めて見た気がした。

私の前ではいつもママはママで、パパがいた頃も私の前ではママの顔しかしなかったから。

ママが楽しそうで、私も嬉しい。

本当だよ、ママ。

・

それから一ヶ月後、ママと裕太くんは結婚をした。

裕太くんは式を挙げようって言っていたけれど、ママは一度してるからと遠慮して、籍だけを入れたらしい。

2人はめでたく夫婦になって、私には若いパパが出来て、3人暮らしになった。