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夜も更け、月明かりが差し込む軽音部の部室で、Aは目を覚ました。
『あれ……私、寝ちゃって……』
ボーッとした頭で天井を見つめる。
すると、静かな空間に綺麗なピアノの音色が聞こえてきた。
眠りの妨げにならないほど、子守歌のように優しいその音色には、覚えがあった。
身体を起こして音のする方を見れば、窓から差し込む月明かりに照らされキーボードを奏でる零がいた。
零はAが起きたことに気付いていながら、キーボードを弾く指を止めない。
その音に引き寄せられるように、棺桶型の寝床から出て、零の隣に座るA。
『……ジャズ？』
「よくわかったのう』
黙って曲を聴いているうちに再び眠気が襲ってきたのか、うつらうつらと船をこぎ出すA。
「まだ夜も更けたばかりじゃ。もう少し寝ておいで。
何なら、我輩が傍で子守歌でも歌ってやろうか？」
『零ちゃんが歌ったら鎮魂歌みたいになりそうだから、ヤだ……』
「ならんわ」
そんなことを言っているうちに、Aは限界がきたのか零に寄りかかる形で目を閉じた。
『……零ちゃん』
「なんじゃ？」
『零ちゃんでしょ？いろんな『ユニット』に根回しして、英智くんの妨害を頼んだの』
「なんのことかの〜？」
『……ありがとね。ちょっとの間だけでも、零ちゃんと離れて、少し……寂しかったから……』
「！」
零は何か言いたげだったが、Aはすでに寝息をたてて夢の中におちていた。
「……起きてるときはそんなこと思ってても言わんくせに。
おやすみ、愛しき人……願わくば、夢の中でも共にいよう……」
零はそう呟くとキーボードをひく指をとめ、同じくAに寄りかかるようにして目を閉じた。
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2022年9月14日 1時
