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「ところで、どうしてアイドル科に?
図書委員のお仕事以外でこっちの校舎に来るのは珍しいですよね」
『零ちゃんのお弁当届けるついでにお昼食べてたの』
Aがそう言うと青葉はAの手に持っている弁当箱に目を向けた。
「そういえば、お二人は幼馴染みなんでしたっけ?
仲が良いんですね」
『まぁね。その分、苦労も多いけど……
つむぎくんも、零ちゃんに振り回されたら私に言ってね。
太陽光の下で蒸し焼きにしてやるから』
「そこまでしなくてもいいですよ……;」
そんな話をしているうちに分かれ道に辿り付く。
『じゃあ教室戻るね。
今日は図書委員の仕事あったっけ?』
「あ、今日は……いえ、何もありませんよ」
『そう?オッケー、じゃあまたね!』
Aはそう言うと青葉に向け軽く手を振り帰って行く。
青葉はAの姿が見えなくなるまでその場で見送った。
「……」
「つーむぎっ」
「わっ!?零くんっ?」
青葉の背後に突然現れた零に驚く青葉。
「なにこんなとこでボーッと突っ立ってんだ?
なんか悩みでもあんのか?」
「いえいえっ、悩みなんてないですよ。
さっきもAさんとお話してただけなので」
「あぁ……そういやお前とAは、同じ図書委員だったか。
仲良くやってんだな」
「あの人、面倒見がいいですから。
俺みたいな野暮ったい奴にも、分け隔てなく接してくれて。
そんな素敵な人と幼馴染みな零くんが、ほんの少し羨ましく感じちゃいました」
惚けた顔で語る青葉を見て、零はしばらく黙り込んだ後、いつも通りの薄ら笑いを浮かべた。
「だろ?いくらつむぎでも、Aはやらねーからな」
「アハハ、恐れ多いですよ」
笑ってはいるが、零は青葉の抱いている淡い想いに当然気付いている。
だが、それを知らぬ顔でいつも通りに接し、この話をなかったことにしようとしているのだ。
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年9月1日 21時