それぞれの岐路 ページ5
「俺は、自分がどうしたらいいか分からないんです」
とうとうどーやんは頭を抱えはじめた
「AIは入力した内容の中で犯人を特定してくれる。そのAIが言うのなら、黒島さんが犯人だということは…………かなり高い確率です」
「でも、彼女に情が移ってしまってAIを信じたくない。彼女に不利な情報すら 受け入れることができない、ですか」
「研究者、失格です…………」
手塚翔太が怒り狂うのも、どーやんが悩み込むのも、両方俺には理解できた
「俺は、…………どうしたらいいんでしょうか」
「好きにしたらいいんじゃないですか」
また涙目などーやん
大概打たれ弱いようだ
「もともと、あなた達ふたりは犯人探しに対するベクトルが違っていたでしょう」
手塚翔太は、妻を殺した犯人を 純粋に突き詰めたいだけ
どーやんは、自分の知的好奇心を満たし AIの可能性を試したいだけだったはずだ
どーやんの場合は当初の感情に加えて、手塚への友情、黒島への恋心が複雑に絡み
一方をたてれば他方がたたない現状に、判断能力が鈍っている
「犯人探しをする動機がぶれない手塚と違い、あなたが悩むのは当然です」
「じゃあどうしたら…………」
「好きにしろと、言ったよな」
「……………………………。」
「あなたは警察でも、被害者の遺族でもない。犯人を捕まえる義務はあなたにはないんですよ。
その上で、自分がどうしたいかは、どーやんさんしかわかりません」
好きな女を信じたいなら信じればいい
友情を取るなら私情を捨てる
「ただ、限りなく黒に近い彼女を信じるなら、それ相応の覚悟を決めることをお勧めしますね」
「それ相応の、覚悟、ですか」
「大事な人に裏切られる覚悟です。身を滅ぼすほどの苦悩を伴います。そんな可能性があるものを、人に決められて背負えますか？」
殺されるかもしれないし、罪を押しつけられるかもしれない
何より信じたものに裏切られるのは、自分自身の存在意義を木っ端微塵にボロボロにする
「経験したような口ぶりですね」
「数年前の自暴自棄の結果が、今の情けない俺ですから」
どーやんは少し考えていた
慎重に考えて決めればいい
「ありがとうございます。神谷さん」
PCを持って出ていく どーやん
その表情はまるで憑き物が落ちたようで
はじめの鬱々とした状態から脱することができたようだった
ところで、俺への協力はいったいどうなったのだろうか
すこぶる不本意ではあったが、相棒の帰還を待つしかない
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
