番外編:手を繋ぐ ページ23
「神谷さん、おやすみなさい」
名字Aの手が伸びて、その手に手のひらを重ねた
「おやすみなさい。Aさん」
声を掛ければ、へにゃりと笑う名字A
目を閉じる姿に安堵する
今日も彼女は眠れるはずだ
それに気づいたのは、彼女が目覚めて二日目
消灯時間が近づくにつれて彼女が落ち着かなくなるのに気づいた
状況が状況であるために、俺は熟眠することを避けている
警備が比較的眠くならないであろう22時から1時頃までしっかり眠り、それから朝までは微睡む程度
何かあればすぐ、飛び起きるつもりで居る
いつも通り1時頃に目が覚めて、周囲の気配を確認する
特に今のところ問題はない
が
隣の布団がせわしない
寝返りばかり繰り返す彼女
さすがに二日三日と続くのを見るに、夜は明らかに眠れていない
逆に昼間は眠そうで
昼寝るから駄目なんだろうと、何度か妨害を試みるも
昼寝なくても、夜も寝ない
挙げ句の果てに迷惑がられる始末
どうしたものかと思っていた矢先、手を握ってほしいと頼られた
素の
名字Aに
この
俺が
頼られた
「かみやさん」
「どうしました」
目を向けるとうっとりと微睡む彼女
「かみやさんのて すきです」
もうすぐ眠りに落ちるのだろう
名字Aはひどくぽやんとしている
「あたたかくて おちつく…………」
素直な彼女は珍しい
今なら何でも言うだろうと思うと、悪戯心がむくむく湧いた
「好きなのは、手、だけですか」
「かみやさんのて、だいすき………」
「俺のことは」
もう、ほとんど寝ぼけているのだろうが、俺は若干意地になった
「て だけだったら けっこんしたい」
「俺と結婚したら手もついてきますよ」
「え………それは、どうだろうか………」
その返答はどういう意味だ
名字Aは失礼が過ぎる
「肉と手だったらどっちがいいの」
「おいしいおにく すき」
「………………………………。」
彼女のヒエラルキーの中では
肉 ＞ 手 ＞ 本体
の図式が確立した
これは…………むかつくな
本来なら鼻を摘まんで起こしてやりたいところだが、さすがに思い止まった
こっちの気持ちはお構いなしに、すぅすぅ穏やかな寝息が聞こえる
彼女を起こさないように
大好きと言われたこの手で撫でてやる
「かみや、さん………す き ………」
"おまんじゅう、の、つぎに……"とかいうアホな発言だけ聞かなかったことにした
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
