44 ページ44
「私は…………道具としても役に立たないのですね」
ぽつりと零れたAの声に
ぐっと胸が詰まる
「両社の結び付きを強くすることだけが、私の存在意義なのに…………」
「…………そんな風に言われたのか」
瞳に涙を湛えたAが けなげに頷く姿を見て
思わず肩に手を伸ばした
「私は汚いんです…………触れてほしくありません」
そっと俺から距離をとるAに ぐっと手を握りこんだ
正直…………Aが指導の名目で、複数の野郎と関係を持たされたと聞いたときは
胸がズタズタにされた気分だった
今でも、東三条やその野郎達には殺意すら沸く
でも、こいつには罪はねえんだ
他人の手に汚されていたとわかったところで
Aをいとおしく思う俺の気持ちは変わらねえ
「お前ぇは汚くなんてねえよ…………」
「相良さんは知らないから…………！」
「んなもん関係ねえ」
関係ねえんだよ…………
自分の掠れた声がどこか遠くで響いている
自身にも言い聞かせているような
そんな感じだ
目の前で震える
大事で
いとおしくて
哀しい女を
強引に胸に抱き寄せた
「やめ…………」
「止めてなんて言うな」
抵抗しようとするAを無理やり腕の中に閉じ込めた
見上げてくるAの瞳
戸惑うように揺れている瞳
その瞳に映る男は
今までお前に無体を働いてきた男共と
お前ぇの中では変わらないのか
「他の男共といっしょにしねえでくれ…………」
顔を見られたくなくて Aの肩に顔を埋める
「俺に義務感で抱かれようとするんじゃねえよ」
お前の方が辛いのにな
ツンと鼻に痛みが走る
「お前ぇの存在意義なんて…………お前ぇの実家の人間が決めていいもんじゃあねえ」
腕のなかで Aが息を止めたのがわかる
空っぽのAに 哀しい役目を植え付けやがって
東三条の野郎
許さねえ…………！！！
「いいか？
A………お前ぇのホントの役目はよォ…………」
小さくて 消えちまいそうなAを
出来るだけ優しく
撫でる
「自分の心を取り戻して…………自分の幸せを見つけることだよ」
布団の外で 音がやむ
今までふたりを隠していた 布団を取り払った
「ありがとうな。A」
戸惑いに揺れる瞳からは 俺の気持ちが伝わったかはわからねえ
「…………愛してる…………」
柔らかい唇をそっと撫でて
もう一度
唇の端に
口づけた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はむ(プロフ) - 蛇姫さん» 蛇姫さま ２回目のコメントありがとうございます！スッゴくうれしいです！鬱展開でもお付き合いくださってありがとうございます！ゆっくりですががんばりますね(*^^*) (2019年3月27日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
蛇姫(プロフ) - 作品読ませてもらってます。心が温まります！相良さんの優しい雰囲気がすごく好きです。作者さんのペースで更新頑張ってください！応援してます (2019年3月25日 11時) (レス) id: c00677cd65 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 青菜さん» 青菜さま うれしいです！私もいただいたコメント何度も読み返してしまいました！ゆっくり更新で申し訳ないですが、これからもよろしくお願いします！！ (2019年3月3日 15時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
青菜 - めちゃくちゃ好きで何度も最初から読み直してます。更新大変だと思いますが頑張ってください！ (2019年3月2日 23時) (レス) id: dec0cd6493 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 蛇姫さん» 蛇姫さま 楽しみにしていただけてうれしいです！なかなか今回は書くのが進まないので、コメントすごくありがたいです！ (2019年2月27日 23時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はむ | 作成日時：2019年2月16日 21時
