259……Ki ページ19
「ただいまー。」
「おかえり、宏くん。お疲れ様っ。」
Aちゃんから藤ヶ谷と会う約束をしていいか聞かれた時、いいよと言った後に、会った日はうちに来て欲しいと伝えていた。
それが今日で、Aちゃんは昼間藤ヶ谷と会ってからうちへ来てくれていた。
「疲れたー。ハグして、Aちゃん。」
いつものように両手を広げて言えば、釣れない返事が返ってきた。
「今スープ温めてるとこで、火点いてるからあとでね。」
「えぇぇー、嘘だろ……？」
Aちゃんは忙しそうにパタパタとスリッパを鳴らしながらリビングへと消えて行った。
「もうハグの気持ちになっちゃってたのに、どうしてくれんだよ。」
背負ったままのリュックを置いて手洗いを済ませてから、リビングを抜けてキッチンへ直行した。
「もうハグしてもいい？」
鍋を温めながら半分に切ったミニトマトを盛り付けているAちゃんに、後ろからお腹に手を回して聞いてみた。
「今が一番ダメな時です。」
「えぇぇ、さっきよりもダメなの？」
「ふふっ、ダメで邪魔なやつだもん。」
「んふふ、ひでぇ。邪魔しないから少しだけ。」
「ダメだよぉ。」
ダメって言いながらも声が弾んでるから、いいよね。
だってAちゃんは今日、他の男とデートしてきたんでしょ？
俺いいコに我慢してたんだし、このくらい許してよ。
「はい。宏くん、これ運んで。」
「はーい。じゃあ、続きはベッドでしようね？」
「もうっ！そう言うこと言わないでー。」
「んははっ。」
照れて怒り出したAちゃんの手からふわふわの卵が乗ったハヤシライスを受け取って、ダイニングテーブルに運んだ。
「いただきまーす。」
ハフハフしながらふわとろ卵と一緒にハヤシライスを頬張った。
「この卵、最高に美味いっ！なんだこの最強コラボは。」
「あははっ。気に入って貰えてよかったぁ。」
一緒に出てきたポテトサラダもコンソメスープも、どれも美味しくてついつい食べ過ぎてしまう。
「Aちゃん、おかわりー。」
「はーいっ。」
まぁ、明日ジム行くしいっか。
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作者名：にかみつば
| 作成日時：2020年12月9日 18時
