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「北やん、呼ばれたよ。」
楽屋の隅で屈んで電話をしていると宮っちに肩を叩かれたから、口パクですぐ行くと伝えた。
「あんた早く行きなさい！」
「ん、行く。じゃあ、なんかあったら連絡して。」
「はいはい、じゃあね。」
もしかしたら高熱でうなされてるかもしれないし、母ちゃんが様子見に行ってくれるのは助かるけど、もしAちゃんが起きてたら、めちゃくちゃビビるよな……。
やべぇ、すげえ心配になってきた。
・
どうにか予定通りの時刻に仕事が終わって、帰宅できたのは夜の8時だった。
Aちゃんが寝てると思って、そっと玄関を開けると母ちゃんの靴が揃えて置かれていた。
まだいたのかよ。
すぐに寝室を開けて覗くと、Aちゃんは静かに眠っていた。
食べ物には一切手をつけたあとは無いけど、スポーツドリンクは飲んだ形跡があって安心した。
起こさないようにそっと扉を閉めて廊下を抜けてリビングに入ると母ちゃんがキッチンで洗い物をしていた。
「ただいま。」
「あら、おかえり。ご飯は？食べる？」
「あるなら食いたい。」
「ちょっと待ってて。」
待ってる間に先にシャワーを浴びてリビングへ戻ると、ダイニングテーブルに親子丼ときのこのお吸い物が出来ていた。
「母ちゃんの飯食うの久々だわ。いただきまーす。」
「帰ってきて彼女の様子見てあげたの？」
「ん、寝てた。会った？」
「様子見に行った時に会ったけど……彼女、未成年？」
「いやっ、ハタチ超えてる。」
「はぁ…それならいいけど。若かったから心配しちゃったわよ。」
まぁ、息子は30過ぎてんのに10代のコと付き合ってたら、そりゃ心配にもなるわな。
色んな意味で。
「具合悪そうだった？」
「辛そうだったから解熱剤飲むのにお粥作ってあげたら食べてすぐ寝ちゃったみたい。」
「そっか、悪いね。」
「彼女今日も泊まるなら向こうの親御さんにちゃんと連絡するのよ？いい？」
「わーったよ。それより婆ちゃんから預かったモノって何？」
「あー、これ。お土産だって。」
土産？
手のひらサイズの箱を受け取って開封してみると。
「え、招き猫！？なんで？」
「この間ここ来た時にそのでっかい招き猫見て、あんたが好きだと思ったらしくて買ってきたんだって。」
「マジか……」
好きとかじゃなくて、番組で藤ヶ谷から貰ったから飾ってるだけなんすけど。
婆ちゃん、マジか。
まぁ、ありがたく隣に飾っとくか。
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作者名：にかみつば
| 作成日時：2020年12月9日 18時
