13話 ページ13
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何度もリアルイベントに参加したことのある出久は、膝から崩れ落ちそうになる同行人の手を引いて展示を楽しんでいた。
推しへの愛を拗らせたオタクがイベントに初参戦するとこうなるのかと、妙な呻き声をあげるチキン丸を見て思う。
順路はNo.5から上がっていく形になっている(恐らく入口付近に人集りを作らないためだ)ので、No.4までは出久の豆知識に頷きながら進めていたのだが。
「ビジュ良…………むり……………………」
ホークスの展示に入ってから涙声になった彼に、出久は特大の「わかる」を心の中で呟いた。オタクに推しは効果抜群だ。
出久よりも背の高い彼は、生まれたての子鹿のようだった。
「あ、ホークスの学生時代はないみたいだね」
「エッ」
「だ、大丈夫…?」
No.3エリアの終盤まで来て、No.5とNo.4にはあった活動前の写真がないことに出久は気づいた。
本人が拒否をしたのだと説明のパネルがあり、出久は1番楽しみにしていた展示がなかった同行人を気遣う。ぴしりと固まった彼の表情は、サングラスに隠されて見えなかった。
「むり……」
「残念だね…」
「解釈一致すぎてむり」
僕が言うのもなんだけど、この人相当だな?
「SNSもしない本名も家族構成も明かさない秘密主義の推しが推しムーブしてて無理死んじゃう」
「ホークスファン的にはセーフラインだったんだ!?」
「本人が拒否って時点でセーフもアウトもないよこれがアンサーなんだから…ってこれ、推しが口出ししたの?推し監修?てことはこの部屋に推しがエッアッ」
「あれ?あそこにあるのってモニター?」
新事実に大興奮する同行人をスルーして、出久は少し開けた場所にあるモニターへとチキン丸の手を引く。説明パネルによると、学生時代のコーナーを丸々カットしたお詫びにホークス自らインタビューを申し出たとあった。
動画に映るホークスは珍しく私服姿だ。ハッとして出久が隣を見ると、同行人は声も出ない様子だった。
『や〜申し訳ない!ちょっと事務所NG出ちゃいまして…って言うのは冗談で、単に俺が恥ずかしいだけなんですけどね』
「………………………………いやこれ絶対嘘だ推しは例え黒歴史があろうとネタになるなら恥ずかしがらないエンターテイメント性があるしやっぱり秘密主義なんだ無理誤魔化し方がお茶目可愛い無理」
「チキン丸さん……」
ちょっと痛いかも、とがっしりと握られた右手を振りほどく非情さが出久にはなかった。
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蒼月(プロフ) - ホークスがなんで腕時計つけてるのか気になりすぎてやばいです!!良ければ短編でもいいので、厳しいかもしれませんがホークスとの絡み等の続き待ってます(; ;) (2022年10月17日 22時) (レス) @page30 id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - るぽたさん» 返信が遅れてしまい、申し訳ないです;; オタクは皆同じということですかね!!(?) 止まり気味ですが気長にお待ちいただければ幸いです! (2022年3月16日 23時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
るぽた(プロフ) - 凄く共感できるところが沢山あってニコニコしながら拝読させて頂きました……とても面白いです(*'▽'*)応援しております!! (2022年3月6日 17時) (レス) id: 794a8648aa (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - えどさん» コメントありがとうございます!更新が止まっていて申し訳ないです…気長にお待ちいただけると幸いです;; (2022年1月28日 22時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
えど(プロフ) - 更新楽しみにしてます♪。.:*・゜♪。.:*・゜ (2022年1月26日 9時) (レス) id: 67d2f217ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時:2021年12月3日 22時