ただ愛する仲 Ⅳ【Hikaru.I】 (ページ9)

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A side

誰にも癒せない、
地獄のような悲しみがある。

今日1日、浮かない顔をしていた照。

光「あの…年に数回しか兄には会わないんです
　体調とかなにか言ってませんでした？」

『いや、特に…でも薬は飲んでる』

光「それってどんな？」

『鎮痛剤？だとか、青色の。
　詳しくないけどまさか…どこか悪いの？』

光「…いえ。あと、事故の話はしないで。
　兄は遺体と数日間閉じ込められていたんです。
　つらいだけの記憶ですから…」

『え？それは…』

光「聞いてませんか？」

照が外戻ってくるから慌てて話題を変える。
こそっと呟かれたのは、「その薬を持ってきて欲しい」。

お開きにして一度は帰ったものの彼が心配で
道を引き返した。

『…何してるの？』

暗闇で1人俯く彼に声をかける。

照「…帰れ、頼むから」

『嫌だ』

照「1人で居たいんだよ」

『ずっと1人だったでしょ、もう駄目。
　見てられないよ。おばあさんの話もしない。
　さっきも貴方だけが黙ってた！』

照「…それで？」

『…話せないほどつらいの？』

照「話すことがないだけだ、いいから帰れ」

なんですぐに帰らせたがるんだろう。
いつも、私を早く帰らせたがる。

『帰らない、心配だから。』

照「恥晒したくねぇんだよ」

『情けない私の姿を見ても側に居てくれた。
　今度は私の番でしょ？』

座っている彼の頭を撫でようとすると、
その手を掴まれた。

照「俺は帰れって言った。
　今帰らないなら…二度と離さない」

目をうるうるとさせて、見つめる瞳。
そっと手を離すと絶望した顔になった。

…期待してんじゃん。

彼の頭を寄せて、ぎゅうっと閉じ込めた。

徐々に嗚咽が聞こえてきて、私もぽろりと涙が。

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